私は、陽菜みたいになりたいのかな。 それとも、陽菜の隣にいたいのかな。
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コラム
放課後の教室は、
昼間とは少し違う顔をしていた。
窓から差し込む光が、
少しだけオレンジ色になっている。
凪は席に座ったまま、
陽菜の方を見ていた。
陽菜は、まだクラスメイトの話を聞いている。
時々うなずく。
時々笑う。
でも、自分の意見を押しつけたりはしない。
ただ、相手の話を受け止めている。
凪は不思議に思う。
どうして陽菜の周りには、
人が集まるんだろう。
どうしてみんな、
あんなに安心した顔になるんだろう。
私なら、きっと、何か言わなきゃと思う。
元気づけなきゃ。
助けなきゃ。
正しいことを伝えなきゃ。
そんなふうに考えてしまう。
でも陽菜は違う。
まるで、雨の日の紫陽花みたいだった。
凪はふと、通学路で見た紫陽花を思い出す。
青。紫。少しだけ桃色。
どれが正しい色なのか、説明できない。
でも、綺麗だった。
見ているだけで、心が落ち着いた。
陽菜も少し似ている。
無理に答えを出さない。
無理に誰かを変えようとしない。
ただ、そこにいる。
それだけなのに、なぜか安心する。
その時、相談していた女子生徒が笑った。
「ありがとう」
陽菜も笑う。
「うん」
それだけだった。
その短いやり取りを見ているだけで、
胸が少し温かくなる。
私は、陽菜みたいになりたいのかな。
それとも、陽菜の隣にいたいのかな。
どちらなのか、まだ分からない。
でも、一つだけ分かることがあった。
陽菜を見ていると、
頑張らなきゃという気持ちが、
少しだけ静かになる。
肩の力が抜ける。
呼吸が深くなる。
まるで、
雨上がりの紫陽花を見ている時みたいに。
その感覚が、凪には心地よかった。
そしてまた、新しい問いが生まれる。
「私は、陽菜といる時の自分が好きなのかな」
窓の外では、夕暮れの光が校庭を照らしていた。
その答えは、まだ見つからない。
でも、凪は少しだけ、
その答えを知りたいと思い始めていた。