私は陽菜の隣にいたいのかな?

私は陽菜の隣にいたいのかな?

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コラム
チャイムが鳴る。
午後の授業が終わった。

教室の空気が、
一気にほどける。

椅子を引く音。
友達を呼ぶ声。
部活動の話。
いつもの放課後。

でも、
凪の心だけは少し落ち着かなかった。

"安心と恋は何が違うんだろう"

授業中から考えていた問いが、
まだ胸の中に残っている。

帰り支度をしながら、
ぼんやり考える。

その時だった。

前の席で、
誰かが陽菜に話しかける。

「陽菜、これどう思う?」

クラスの女子だった。
どうやら悩み相談らしい。

陽菜は手を止める。

そして少し考えてから言った。

「うーん」
すぐには答えない。

まず相手の話を聞いている。

途中で遮らない。
否定もしない。
ただ聞いている。

凪はその様子を見ていた。

女子生徒は話し続ける。

しばらくして、
陽菜が笑う。

「それ、私だったらこうするかも」

アドバイスというより、
自分の考えを伝えている感じだった。

押しつけじゃない。
答えを決めるのも相手。
その空気が自然だった。

女子生徒は少し笑う。

「そっか」
それだけだった。

でも、さっきまで曇っていた表情が
少し柔らかくなっていた。

凪は思う。
陽菜は不思議だ。
人を変えようとしない。
正そうとしない。

それなのに、
話した人が楽になっている。

凪は昔のことを思い出す。

誰かが悩んでいると、
なんとかしてあげたくなる。

励ましたくなる。
助けたくなる。

でも、
うまくいかないこともあった。

良かれと思って言った言葉が、
相手を苦しめてしまったこともあった。

その度に、自分を責めた。
"もっと上手く言えたら"
"私の伝え方が悪かったのかな"
そんなことばかり考えていた。

でも陽菜は違う。
答えを渡すんじゃなくて,
相手が自分で見つけるのを、
隣で待っているみたいだった。

その姿を見て、凪はふと思う。

もしかしたら、
私が陽菜といると安心するのは,

陽菜が、
私を変えようとしないからなのかもしれない。

頑張れとも言わない。
しっかりしろとも言わない。

ただ、
そこにいていいと言ってくれる。

その優しさが、
凪の胸を静かに温める。

そしてまた、
新しい問いが生まれる。

"私は陽菜が好きなのかな"

ではなく、
"私は陽菜の隣にいたいのかな"

その問いの方が、
今の自分にはしっくりくる気がした。

窓の外を見る。

夕方の光が、
少しずつ色を変え始めている。

そして凪はまだ知らない。

その問いが、
これからもっと大きな意味を持つことを。
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