勝手に決めるな。俺の気持ち聞いてからにしろよ。

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コラム
夕方の光が、廊下の床に長く伸びていた。

窓から差し込むオレンジ色が、
三人の影を静かに並べている。

誰も、すぐには言葉を出さなかった。

凪は、少しだけ目を伏せた。
胸の奥が、落ち着かない。
さっきの言葉が、まだ耳に残っている。

「勝手に決めるな。
 俺の気持ち聞いてからにしろよ。」

その言葉を思い出すたび、胸がぎゅっとなる。

でも。
凪は、小さく息を吸った。

そして、少し笑う。
「……わたし、先に帰るね。」

静かな声だった。
でも。
その声は、どこか遠かった。

悠真の眉が、少しだけ動く。
「もう帰るの?」

凪はうなずいた。
「うん。今日は、ちょっと疲れちゃった。」

本当は違う。
疲れているのは、体じゃない。
心だ。

でも。
そんなこと、言えるはずがない。

凪は、カバンの紐をぎゅっと握る。
そして歩き出そうとした。

そのときだった。
「待てよ。」
悠真の声。

凪の足が止まる。
振り向かない。
振り向いたら、きっと顔に出てしまうから。

少しだけ、沈黙。

夕焼けの光が、さらに濃くなる。

悠真は、ゆっくり言った。
「また、勝手に決めてる。」

凪の胸が、強く揺れる。
でも。

凪は、笑ったまま言う。
「決めてないよ。」

「……決めてる。」
短い言葉。

でも。
その声は、まっすぐだった。

その空気を、陽菜も感じていた。
陽菜は、二人を交互に見る。

いつもの空気じゃない。

凪の笑顔。
どこか、無理をしている。

悠真の声。
少しだけ、強い。

陽菜は、ふっと小さく息をついた。
そして、やわらかく言った。
「なんかさ。」

二人が、陽菜を見る。
陽菜は少し笑う。
「わたし、邪魔してる?」

凪の心臓が跳ねる。
「そんなことないよ!」
凪は、すぐに言った。

少し、早すぎるくらい。

でも。
陽菜は、わかってしまった。

三人の間に流れる、ほんの少しの違和感。

でも。
陽菜は、それ以上何も言わなかった。

代わりに、明るい声で言う。
「じゃあさ、帰ろっか。」

「駅まで一緒に。」
その言葉に、凪は一瞬だけ迷う。

でも。
「……うん。」
と、うなずいた。

三人は歩き出す。

夕焼けの廊下。
並んだ足音。

でも。
その距離は、少しだけ変わっていた。

悠真は、凪の背中を見る。
さっきより、遠い。

凪は、前を向いて歩く。
でも。
胸の奥で、思っていた。

(これでいい。)
(これでいいんだ。)
そう言い聞かせながら。

でも。
その背中を見ながら、
悠真は小さくつぶやいた。
「……よくねえよ。」

凪には、聞こえなかった。

夕焼けの光だけが、
静かに三人を包んでいた。

そして。
物語は、まだ動き始めたばかりだった。
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