新規で始めたプリント屋さんや個人事業主さんが軒並み消えていっているので
小ロット系の印刷業への転職を考えている方に
実態を書いておきたいと思います。
「手数料は1枚20円で良いのでTシャツ刷ります!」
「どこよりも安くやります!仕事ください!」
こういったDMやメッセージが個人事業主さんや、新規で起業したプリントサービスさんから届くことが2024年以降 多くなりました
安価のコストに抑えたいのはどの事業や業者においても同じですが
それでもまともなインクを使って、まともな施工が出来なければなりません。
突然、新規のプリントショップが増えた背景には下記のような要因があげられます。
印刷業ブームの経緯
コロナの前後に流行っていた
【早期退職!悠々自適なファイアー生活】のブームがあった際に
様々なフランチャイジーのパッケージ商材が流行し
「小ロット向けの印刷機材さえ買えば、明日からでもTシャツプリントの仕事を始められる!全ての売上が自分に入ってくるので儲かる!印刷に使うTシャツやインクはココとココで仕入れれば良いだけ!」
といったパッケージ化された起業/転職を促すフランチャイジー商材も流行りました
そのパッケージを購入すれば確かにプリントは始められる。
ただし、その機材だけでプリントサービスの運営が出来るのかといえば、疑問の残る内容でした。
まず、機材導入費とランニングコストを回収しながら回すためには
1カ月に何百、何千の枚数のオーダーをプロパー価格で取ってきて
納期も守って回さなければ成り立たない
という事は書かれていません。
大手印刷業者さんは1ケあたりの施工費は非常に格安です。
しかし、それは何千万円、何億円という事前の設備投資があって初めて実現できるクオリティと単価です。
受けるオーダーも10枚100枚の話ではなく、常に5000や万の単位のオーダーが飛び交います。
新規店舗が簡単に真似が出来る単価やクオリティのレベルでは有りません。
まず直面するのは「売上を出せない」
売上を出すには、とにもかくにも受注を獲得するしかありませんが突然プリント屋に転職しても
↓
①元々印刷業界にいたわけでもないので地盤もない
↓
②印刷機材のスペックや印刷クオリティについての知識もない
↓
③実制作における2Dデザインの校正ルールも知らない
↓
④そもそもファッションやアパレルの善し悪しについてノウハウすら無い
そんな状況でオーダーを取る方法はただ一つ!
「安値を売りにするしかない!」
「安値でやればオーダーが取れる」というのは確かに方法の一つですが
先にも書いた通り、安い価格帯でちゃんとした施工が出来るのは
1オーダー2万枚などのオーダーを常に回している大型案件に特化した業者さんの専門分野なので
何の基板も無い素人が突然真似できるサービスではありません。
この時点で破綻のストーリーが始まってしまっています
それでも走り出してしまった結果
安値勝負で ある程度の受注を取ることが出来たとします。
安心したのもつかの間、重大な見落としに気づきます。
自分が購入した機材のスペックでは大型案件を受けるにはスペックが足らなすぎました。
このままでは納期を割ってしまう!
かといって、他の業者にヘルプを出してしまったら全部の利益が消し飛びます
「休みなく作業し続ければ、なんとかこなせる・・」
しかし、稼働時間の全てを制作に充ててしまうと
来月は受注はゼロになってしまいます
となると
・オーダー獲得とオーダー対応が出来る人員が最低でも1人
・制作につきっきりの人員が1人
・制作とオーダーの両方のヘルプに入れる人員が1人
最低でも3人はいないと成立しません
しかし、
人員を増やすとなると目標売上はこれまでの2倍に設定しなければなりませんが「激安」で仕事を受けてしまっているため、普通の売上の3倍の受注を取らなければ、従業員にまともな給与を払うことすら出来ない事に気づきます。
詰みの始まり
安値勝負を始めてしまったので充分な粗利が取れない状況ですが
人員を増やさない限りは事業継続が出来ません。
まともな人件費を払う事は出来ない。
↓
賃金の安い日雇いアルバイトなど、全く知識も技術の無いスタッフを使う
↓
毎回、初心者のアルバイトさんに施工をさせる事になる
↓
クオリティの低い物を作ったり、制作ミスを乱発するようになる
↓
ミスが起きると2枚分の利益が飛ぶので、ミスがあっても作り直しせずに納品するようになる
↓
雑な仕事しか出来なくなり、案件をくれていたお客さんも別の業者に流れてしまう
↓
顧客の減少に焦り 更に安い価格で集客を得ようとする
↓
受注を受けるほど赤字を生むようになり、禁じ手を使うようになっていく
何がいけなかったのか
安易に儲かるようなイメージだけ案内した仲介屋も悪い面はありますが
何の検証もせずに事業開始してしまった当人の責任が大きいとも言えます。
・機材のコストを回収するまでに何年かかるか
・毎月、どれだけの売上に達さなければ、成り立たないのか
・目標売上に達さなかった場合の予防策はあるのか
・そもそも市場に食い込める「強み」があるのか 等、
予期せぬシナリオ等、考えておくことはたくさんあります。
安さ勝負の行き着く先
安さ勝負で経営が切羽詰まってきた業者は必ず同じ方向に向かっていきます
①とにかく安い 薄い生地やポリ生地をメインに使いだす
↓
コットン製品は原価が高いのでポリエステル価格を表示するようになります。
ポリ製品にもいろいろありますが、安く作られているポリ製品は
やはりアパレルブランドが使っているような高機能ポリではなく
THEポリエステルな物になっていきます。
着たら透ける 毛玉になる フルカラー印刷で致命的に乗りが悪くなるといったデメリットがあることはお客さんに案内しません。
そういった事を知らずに発注してしまったお客さんは
「もう一度この業者に発注したい」と思うでしょうか?
目先の利益を優先しすぎて、リピーターを生むことが出来なくなります
②ウソの価格を載せだす
↓
【高品質Tシャツ制作 1枚 プリント込みで1000円!!】と謳っておきながら発注画面にいくと→ 1枚 2600円
そもそも 何が高品質なのか 謎
ハイエンドのアパレルブランドが使っている高品質の高級生地(チリやポルトガル等)を使っているTシャツは無地の状態の仕入れでも1枚3800円や5000円などの高単価の物になります。
国産の高機能ポリ生地で作ら他物はTシャツでも3000円程度はしてきます。
もちろん仕入れ時のロット数にもよりますが高品質の生地は安値で取引されていません。
込み込み1000円と煽りつつ、発注して見ると請求額が2600円
「※コミコミ1000円は発注枚数が300枚で規定条件の範囲で発注した場合の価格です」と小さくて読めない文字で書かれており
+校正費
+サイズ超過費
+プリント追加費などのオプション価格をガンガン乗せて
知識のない人をケムに巻いて絡めとるような請求の仕方に頼っていては
利用者はその業者を信用できなくなります
③インクを薄める/絞る
ここまでくるともはや終わりですが
安値勝負で経営が回らなくなってきた業者が次に行うのは
品質と制作のクオリティを下げて原価を落とすことに走ります。
白インクはシルク、ガーメントともに重要な部分な為、単価も他のインクに比べて高価です。
白インクを出来るだけ節約するために
インクジェットの白引きの量を減らしてコストを浮かせます。
しかし、下引きの手を抜くという事はカラーインクの乗りがマダラになったり、均一に色がならなくなったり、発色も悪くなっていきます。
④純正ではないインクや塗布材を使いだす
↓
聞いたこともない謎のメーカーの非純正インクや塗布材を使いだします。
海外商材の中には某有名メーカーのプリンターにて、そっくりそのまま使えるまがい物のインクが互換品として出回ることがあります。
以前は海外からメールで突然 商材の紹介が届き
日本の相場ではありえない安値の資材や商材の取引を持ち掛けてくる
といった事は良くありました。
パッと見は有名メーカー用のヘッダーや純正インクと同じスペックに見えるものの、もちろん純正品ではないので「それ本当に大丈夫なの??」と心配になるような資材もあり
過去にはプリントTシャツの塗布材が原因で化学火傷を負ったという事件もニュースになりました
安さを追求しすぎて窮地に陥ってしまうと根本的に大事な部分を見失っていってしまいます。
そもそも お客さんは安いだけの商品を求めているわけではない
キッチンペーパーやボールペンなど消耗品に関しては
品質よりも安さで選ぶ人も多いかもしれませんが
プリントウェアやオリジナルウェアは「服」なので
消耗品でありつつも、どちらかというと趣向品に近い物です。
プリントウェアの業販においても、いわゆる量販品を作りたいブランドと
デザイナーブランドとしてアパレルを販売しているブランドでは
使用する印刷業者も違います。
東京アパレル界隈のデザイナーやドメスブランド、アーティストのブランドの仕事だけを請け負う職人さんもおり
そういった所では、版代も刷り代も普通のプリント屋さんの相場よりはるかに高いです。
しかし、印刷で一番重要となる白インクを指定のメーカーで刷ってくれたり
労力を割くためにシャバシャバなインクで刷りたがる業者も多い中、
粘度の高い大判の白刷り(かなりの筋力が必要になる)等もキッチリ刷れる人員を確保していたり
デザイナーが持ってきた原案を版に刷る時に一番効果的なメッシュ数やインクの選定をしてくれるなど
・本当に服が好きな人の為に特化したサービス
・専門外の人間には判断できない事を説明してくれる
・制作物のクオリティを高める
という部分で特化した専門性を持っています。
上記は販売品として売価を上げるための制作ですが
それとは真逆に販売品ではなく
1日しか着ない文化祭のTシャツや
アルバイトスタッフ用のポロシャツなど
出来るだけ安い物を作りたいといった需要の層もあります。
どちらの方向性の方が自社に有っているのか
自社で提供できるサービスは誰に向けてのサービスなのか
専門性をどこに置けば、需要が見込めるのか
自分が提供できるスタイルや方向性が無ければ難しい時代になっていると感じています。
弊社では一般向けのプリントサービスと
こだわる物を作りたい方向けのサービスは完全に別けており
それに付随し、サインディスプレイや小物系の制作サービスなどを展開しており、それらのサービスの中で生じたサンプル品を店頭で販売するなど
アパレル業、印刷業、デザイナー業など各スタッフが専門的に学んできた分野を発揮できるポイントを用意することで
デザインにこだわりたい、施工にこだわりたい、素材にこだわりたいといったジャンルの違う要望に応えられるよう
信頼できる職人やスタッフらと 価値のある物を提案できるサービスを念頭としています。