アパレルの制作や生産、施工等が本業ではないデザイナーが作った2Dデザインを印刷に使用すると画面上では良い感じの2Dイメージに見えていたのに
実際に出来上がってきたウェアを見てきたら
(なんか・・ なんかダサくない?)
となるケース。
この現象がなぜ起きてしまうか。
フォトTeeがダサくなる理由
今回は分かりやすいフォトTeeです
衣類のフロントやバックに四角い2D画像を印刷するようなものですが
使用した写真単体はすごく良い写真なのだけど
それを衣類に印刷すると 非常にやぼったく
ファッションなんか気にしないお父さんが作ったような
なんとも言えない 垢ぬけなさ が際立ってしまいます。
かっこいい画像を印刷すれば かっこいいウェアになるわけではない
というのが分かります。
アニメや漫画のコラボTシャツなどでも、
作品は良いのに。作品は好きなのに。
こんなの外で着れないよ。 といった仕上がりの物が多いのは
版権上使用可能な画像が定められてしまっているという事もありますが、
ウェア系に強いデザイナーがディレクションに入っておらず
クリアファイルやアクキーに印刷をするような感覚で企画を先行させてしまっているのが原因だと捉えています。
日本のコラボTシャツはポスターや有名シーンをベタっと印刷しただけに比べて
USやEU販売向けのコラボTee等を見るとデザイナーがディレクションに入ったことが分かる物が多くあります。
ディレクションと校正が入っていない物は非常にヤボったく
安っぽい物になってしまいがちです。
施工の問題
2D画像を印刷するとダサく仕上がってしまう理由の一つは施工の問題もあります。
紙や写真の印刷は印刷機材の中でも飛びぬけた発色と解像度で印刷が出来ます。
家庭用プリンターでも異常なほど綺麗に印刷できてしまうため
ついつい「印刷=超高精度で印刷される」と思い込んでしまいがちですが
それは紙だからです
衣類は紙ではなく繊維の集まりです。
表面は平面に見えても、実際にはデコボコで穴だらけの糸にインクを定着させるので 紙のようなフラットな平面ではなく
光沢紙のように反射を使って発色を上げるという事も出来ません。
紙への印刷のような発色が出せない理由
画面上のカラーは光の色なのでRGBですが
印刷物はCMYKなので変色し トーンも2段階程度下がります。
良く「パントーン指定すれば指定の色が出せるはず~」という話も出ますが
パントーンで色を指定しても衣類への施工の場合は
そもそも機材もインクも違うので紙の印刷物のような指定色を出すことは、
ほぼ不可能です。
アパレルブランドが同じ服を何回も何回もサンプル制作にかけるのはその為です。
紙の印刷の場合は インクが高温処理されるのは印字がされる時のみですが
衣類は印刷時 印刷した後 仕上げの高温プレス
最低でも3回程度は高温処理が入りますが
インクの黄色や緑は熱による変色したり、色素が飛んでしまいます。
つまり、制作の過程でどんどん色味が変わっていってしまうので
最終的な段階で指定色と同じ色を出すには、かなりのパターンでサンプル出しをしてみなければ辿り着きません。
印刷方法も転写なのかガーメントなのかシルクなのか昇華なのかによって特性も変わってきます。
また、特色やパントーンで印刷をかけるということは
「私のオーダーの為にあなたの会社の人員と機材を独占して使用します。」という事なので
1万円や2万円の規模で収まるような対応額ではありません。
技術的には可能な事でもコスト的に不可能という問題もあります。
※補足
衣類へのフルカラープリントでも転写紙を用いたプリントであれば
高解像度のレーザープリントで印刷した転写紙を衣類に印刷するという方法があります。
しかし、これは衣類に印刷するのではなく
高解像度で印刷した紙を衣類に貼り付けるといった方法です。
仕上がりとしては思いっきり【貼りつけた感】が残る物になります。
それが効果的である場合もありますが、正直難しいです。
その転写紙に印刷された時には確かに指定の表現に近い状態で印刷はされますがそれを衣類に圧着するので、その時の熱処理で紙に印刷されていた色素は飛んで変色をしてしまいます。
その熱での変色や色素の飛び具合まで操作できるような物ではありません。
次に
衣類は四角形ではない
というのがフォトTeeがダサく仕上がる理由です。
画面上で見ているグラフィックは比率の整った四角形の形です。
スマホでもPCでも画面は四角です。
そしてグラフィック画像自体も四角いキャンパス上にあります。
つまり
写真やグラフィックはその四角い画面上のその比率の中にあるから
良く見えているという事です。
それを四角い紙に印刷するのであれば比率は崩れませんが
衣類のような四角ではない物に印刷すると比率は変わってしまいます。
絵画を描くかたや紙系の校正をするデザイナーさんは
黄金比やシルバー比など比率を基準にデザインを進める方もいますが
四角い画面で見ている時には 良い感じなのに
実際に衣類に印刷されると すごくヤボったくなるのはそのせいです。
結論
衣類への写真の印刷は
・思ったような色は出ない
・画像のディティールは各段に落ちる
・比率が崩れるのでおかしく見える
という三つの問題が重なっています。
対処方法
まず、多少酷なですが 色を大事にしている方も多いですが
発色のコントロールをすることは諦めた方が無難です。
何故なら思った通りの発色が出せないのは
デザイナー側の問題だからです。
制作物を作る場合
・制作するアイテム
・使用される機材
・そのスペックや仕様
それに合わせてデザインを作るのがデザイナーです。
もちろん作業スタッフがただの日雇いバイトだったりすると
対応できる事すら対応してくれないというサービスは沢山ありますが
機材の規格や仕様は作業員がどうこう出来るものではありません。
つまり、事前知識も実務経験上のノウハウを持たない人間が
最初から思い通りの制作の道筋が引けるほど簡単な話では無いという事です。
とはいえ、
最初から思い通りにならないのは当たり前の事なので気にすることはありません。
かっこいいグラフィックを作るためのスキルはあっても
それを実装させるには知識と経験を蓄積していくしかないので
トライアンドエラーを繰り返しながら多くの案件を対応して
実績を積んでいくしかありません。
収まりの良い比率の見つけ方について
これは自社のノウハウなので、多くは書けませんが
クライアントがどんな画像や案を持ってくるかデザイナーは選べないので
パターンを見つけて、セオリーを作っていく という事しか書けません。
クライアントの依頼をぶっつけ本番させるわけにはいかないので
日ごろからサンプルを作って、
画面上のイメージと現実としての仕上がりの差異をどこまで均せるか
自社のノウハウとして掴んでいくしかありません。