生活保護と不正受給の本当

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法律・税務・士業全般
生活保護はとかく不正受給がクローズアップされ、報道の的になることで
世間からの批判や偏見の対象になり易いですが、行き過ぎた報道や誤報も多く生まれています。

つまり、マスメディアが視聴者の耳目を集めやすい角度から強引に切り取っただけの偏向報道、いわばポジショントークの賜物なので、むしろこれこそ厳に批判される必要があります。

H24年の厚生労働省・主幹課長会議資料によれば
生活保護の不正受給率は金額ベースで『0.4%』です。

しかもこの中には、高校生の子供のアルバイト代を申告する必要がないと誤解していただけなど悪意のないケースも含まれ、単に行政の説明不足にすぎない事例も多々含まれています。

むしろ、不正受給よりも深刻な問題は『受給漏れ』であり
これこそ、すみやかに改善されなけばならない現実です。


日本の生活保護の捕捉率(ある制度の対象となる人、資格のある人の中で、
実際にその制度から受給している人がどれくらいいるかを表す数値)は
『20%にも満たない』数値で推移しています。

欧米の先進諸国を見てみると、ドイツやイギリスでも60%を超えており
フランスや、福祉大国と呼ばれるスウェーデンに至っては80%に及びます。
(5人の生活保護資格者のうち4人以上は受給できている)

生活保護制度全体の国民利用率については、日本が1.5%程度に過ぎない
のに対して、欧州諸国は平均で5%を超え、ドイツ・イギリスに至っては
10%に近い生活保護の利用率を維持しています。

日本人がいかに同胞に厳しい国民であるか、公共を頼ろうとする人たちに
対していかに厳しい視線を向けているかの証左です。

日本は圧倒的に、生活保護を含む福祉後進国であるといわざるを得ないのではないかと思います。


もちろん、日本人が歴史の中で、古くは『五人組』などの『隣保制度』や、旧民法の家父長制など、互助や相互扶助の精神で、家族の連帯感覚を強くさせる制度を採用してきた背景を持つことは否定しません。

家族の絆や、家族や親族を、個人の延長のように捉えて、家族の問題は家庭内全体の問題というような『連帯責任』感覚に近い意識を、日本人は相対的に強く持っているといえます。

しかし、こうした国民性や民族性と、現代の生活保護制度で受給資格を認定することとは全く別次元の問題です。

現在の法律上も、扶養義務を負うのは夫婦間と、未成年の子に対する親のみであり、その他の関係で、扶養は義務として規定されてはいません。

それにも関わらず、生活保護申請を受け持つ市町村などの窓口職員が、近親者の扶養義務を拡大解釈して扶養を要求したりすることは明らかな誤りです。

労働能力があるかどうかについても、本来は内部障害や精神上の疾患などを含めた臨床医学上の判断が必要にも関わらず、単に年齢の若さや、窓口で一時の受け答えの印象だけで判断するのは、行政権の逸脱で、求めた者に保護申請書を渡さないのは違法行為です。


『不正受給を報じるマスコミの報道の意図』
『不正受給問題よりもはるかに深刻な、有資格者の受給漏れ問題』
『これを受容してしまう日本人の真面目すぎる連帯意識』


こうしたことにも思いをはせてみる必要がありそうです。


そのためには、私たち市民一人ひとりが、生活困窮者や社会福祉にまつわる
意識やリテラシーを高めたり、自身や自身の隣人も、いつ生活保護やこれに
準ずる公的サービスを受ける立場になるかも知れないということを、時には
考えてみて良いと思います。


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