ようこそおいでまし、RIONです。
今回は、ボーカルの音質に非常に大きく影響する『部屋の反響音』についてです。
前回のブログ「#1【歌ってみた】高音質で録れる宅録マニュアル」でも反響音について少し触れましたが、反響音はない方がいいということと、カットするための道具紹介のみでしたので、#2では少し掘り下げてお話ししてみようと思います。
①『反響音とは?』
みなさんは今までミックスを依頼しようとした時に、反響音についてMix師さんから指摘を受けた事がありますか?
ミックス経験がない人からすると、
「だからなに?」「反響してて何が悪いの?」
と思うかもしれません。
反響音、部屋鳴りとも言いますが、簡単に言えばその部屋のリバーブです。
「え?リバーブならいいじゃん。歌うまく聞こえるし、どうせミックスでかけるもんでしょ?」
と言う声が聞こえてきそうですね。
実はミックスでかけるリバーブというのは、オケに馴染むよう計算し、ボーカルに合わせた響き方、長さ、音質、音量などを緻密に調整した、いわゆる「オーダーメイド」のリバーブなんです。
さらには、いくつかのリバーブを作って混ぜる事で複雑かつ自然な気持ちの良い響きを作ります。
でも自宅の部屋のリバーブなんて調整されたものではないし、元の素材が反響してしまっているとその後の処理でどんどん音が悪くなります。
リバーブと言ってしまうと聞こえはいいですが、その実態は汚い響きで音を台無しにする「低音質の権化」です。
②『反響しているとどんなミックスになるのか』
ボーカルの場合は結論から言うと
◆ 生活感のあるいかにも素人くさい、安っぽい音になる
◆ ピッチ・タイミング補正で音が不自然になり、加工されたような音になる
◆ 雑味を含んだような汚い音になる
◆ ボーカルが奥に引っ込み、オケに埋もれやすくなる
◆ オケに馴染まない、別の場所の音に聞こえる
と思ってもらっていいと思います。
他にも細かいところをあげればいくらでもあるのですが、この5つは仕上がりのクオリティに直結し、最も目立ってしまう部分ですね。
特に最近の「歌ってみた」のミックスではピッチとタイミングの補正はもはや当たり前で、絶対にやってもらえると思っている方がほとんどだと思います。
しかしピッチとタイミングの補正はどんな音源でも絶対に音が劣化するので、高音質を目指すなら本来はやるべきことではありません。
現実的なミックスでは、その音質を多少犠牲にし、ピッチとタイミングを揃えることで歌がうまく聴こえる方をとっているわけです。
ただ、反響音を多く含み、少し補正しただけで音が悪くなってしまうようなボーカルデータは、補正したのがバレバレになってしまうため満足に補正できません。
技術のあるMix師さんは多くいるのに、なぜ有名歌い手さんやメジャーアーティストの音源とここまで差があるのか。
良いMIX師さんに出会えていないからではありません。
録音している環境です。
歌唱力のある無しに関わらず、反響しないレコーディングスタジオで録音した音は高音質なんです。
例に出すと失礼ですが、A○Bグループやジャニ○ズの音源、決して歌が上手いわけではない人が歌っているパートも音質はしっかりプロのクオリティですよね。
有名な歌い手さんでも、自宅の部屋やクローゼットの中で録っているという方が多くいらっしゃいますが、ほぼ間違いなく反響音の対策はしています。
③『宅録で反響音を防ぐ方法』
「じゃあ何?結局スタジオに行って高い金払って録れってこと?」
いいえ。
もちろんそれも1つですし1番高音質ですが、私がこのブログで伝えたいのはそんな何の参考にもならない解決策ではありません。
『宅録で反響音を防ぐ方法』を簡単な方法順に紹介します。
◆ マイクの位置に気を付ける
対策効果 ★☆☆☆☆
音が反響する場所は主に「壁」「天井」「床」「デスク」「モニター」です。
それらからマイクをできるだけ離しましょう。
天井や床からの距離を調節するのは難しいので、まずはモニターの置いてあるデスクからマイクを離すこと、壁からできるだけ離れることが重要です。
デスクの上においたマイクで、モニターに向かって歌うのは一番よくないです。
部屋の中なので、全ての壁から1番距離を取れるのは部屋の中央ということになりますね。
この方法だけで反響音を防ぐことはできませんが、やるとやらないでは雲泥の差なので他の方法と組み合わせて必ず行いましょう。
◆ 物を増やし部屋を散らかす
対策効果 ★★★☆☆
レコーディングの時だけで良いので、家中のクッション、ぬいぐるみ、毛布、布団などを持ってきて部屋のあっちこっちに置きます。
厚手のカーペットや絨毯を敷くのも効果的です。
できることなら壁や床を満遍なく埋めるように置きましょう。
壁の中でもマイクと同じくらいの高さに物を置けるとより効果があります。
反射を抑えるというよりは、音をいろんな方向に分散させることで反響しないようにするイメージですね。
例を挙げると、家具とか物が何もない部屋って音が響きますよね。
反対に物が多くて散らかっている部屋では音は響きにくいんです。
◆ リフレクションフィルターを使う
対策効果 ★★★★☆
これは#1でもお話ししているのでここでは割愛しますが、マイクの周りを特殊な素材のフィルターで覆うことで、跳ね返ってきた音がマイクに入らないようにします。
ただし、反響の多い部屋でこれを使っても十分に効果は得られません。
できる範囲で部屋の反響を抑えた上でこれを使うと、より反響音の抑えられたクリアな音が録れます。
オススメ商品も記載しているので是非#1も見てみてくださいね。
◆ 部屋の反響を抑える
対策効果 ★★★★★
そもそも響かない部屋にしてしまう、ということですね。
この方法が1番効果があり、反響音を根本から解決することができます。
具体的な方法としては、
「見えている壁と天井に吸音ボードや吸音材を貼り付ける方法」
が一般的です。
ズッシリとした昔ながらの敷布団を突っ張り棒で壁に固定することでも代用が利きますが、見栄えが悪いですし、ホコリが立つのでアレルギーや喘息の方は気をつけてください。
天井はやはり布団だと厳しいので、専用の吸音ボードや吸音材を使うと良いです。
色々な材質の吸音材がありますが、オススメは「ロックウール」です。
吸音できる音域が広く、吸音効果も高いです。
ウレタンの吸音材が多く売られていますが、こちらは中音から下の吸音があまり得意ではないので、高音だけ吸われた「モワモワ」した音になってしまいがちです。
響く原因は主に硬くて広い面なので、それを埋めるように貼っていけば良いと思ってください。
主に「壁」と「天井」ですね。
おわりに
ちょっと早足になってしまいましたがいかがでしたか?
今回は『部屋の反響音』のみに焦点を当ててお話しさせていただきました。
「歌ってみた」だけでなく、「ゲーム配信」や「雑談配信」などでも、部屋の反響音は声を聴き取りづらくしたり、生活感が出てしまったり、耳障りな音にしてしまったりととにかく迷惑なやつです。
ただ反対に対策してしまえば音質が大幅に向上します。
一気にプロっぽく、専業っぽくなります。
私も普段、ある有名ゲーム実況者さんの動画を見て楽しませていただいておりますが、話し声の音質がクリアなだけでより内容に集中できますし、ストレスなく視聴できます。
(公共電波のラジオと何ら遜色のない音質で配信してらっしゃるので、リラックスしすぎて寝落ちしてしまうこともあります)
彼らがどのように対策しているのか厳密にはわかりませんが、概ね上で書いたことと同じことをしていらっしゃると思います。
最近のマイクやオーディオインターフェースは、低価格でもある程度品質が保たれているものが多いので、使っている物が安物だからといって機材を新しくする前に、まずは反響音対策を試してみてください。
正しく対策すれば劇的に音質が変わります。
クオリティを目指すなら、他と差をつけたいなら、いろんな人に聴いてもらいたいなら、絶対にやりましょう。
「え、このマイクってこんな音だったんだ...」ってなること間違いなしです。
ではまた次回。
以上、RIONでした。