#1【歌ってみた】高音質で録れる宅録マニュアル

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音声・音楽
Bunny Sick Studiosでエンジニアをしております、RIONです。
初めてのブログ投稿で拙い部分があるかと思いますが、最後まで見て頂けると嬉しいです。

第一回目では、歌ってみた・ボーカルカバー・楽曲制作などでボーカルのレコーディングをセルフでされる方に向け、高音質で録れるレコーディング方法をご紹介したいと思います。

ミックス段階ではどうしようも無いものばかりなので、レコーディング段階で気を付けなければいけません。

レコーディングからミックス、マスタリングまで行うスタジオの1エンジニアとしての目線でお伝えします。

それでは早速いってみましょう。

①『ポップガードを使う』

当たり前に使ってるよって人も多くいると思いますが、結構使っていない人多いです。
布製の安い物だと1000円〜3000円くらいで買えるので、ボーカルを録る時は必ず使いましょう。
少し高いけど金属製がオススメ。

◇ メリット
・ポップノイズを防いでくれる
歌詞に含まれる「は行」、「ぱ行」、「ば行」、時には「た行」や「だ行」の発声では、強く息を吹き付けるように発音するため、その息がマイクに直接当たると「ボフッ」というノイズが乗ってしまいます。
ポップガードは、息が直接マイクに当たらないようにガードしてくれます。
湿気に弱いコンデンサーマイクを、発声時の唾から守る役割もあります。

・マイクと口の距離を保ってくれる
マイクと口の距離によって音質が変わるのをご存知ですか?
音の距離感や、高音成分と低音成分のバランスが変化します。
一つのボーカルパートの中で音質が変わってしまうと、ミックスでそれを修正するのは非常に難しく、完全に揃えるのはほぼ不可能です。
マイクと口の間にポップガードがあることで、一定の距離を保ったり、近付き過ぎるのを防いでくれたりします。

◇ デメリット
・布製のものを使うと高域が落ちることがある
これはミックスでどうにかできるレベルですし、ちゃんとしたマイクを使っていればあまり気にする必要はありません。
少し値段が高くなってしまいますが、金属製のものを使うと高域を落とさず録音することができます。

あえてデメリットを紹介しましたが、問題視する程のデメリットでもないですし、改善策もあるのでポップガードは必ず使いましょう
いくつか商品もご紹介するので参考にしてみてください。

◇ オススメ商品 ◇
・STEDMAN PROSCREEN 101(¥4,928円 税込)
オススメ度 ◆◆◆◆◆
金属製で、かかった息を下方向に逃す特殊な設計になっています。
レコーディングスタジオでもよく見かける定番製品です。

・JZ MICROPHONES Pop Filter (¥15,180 税込)
オススメ度 ◆◆◆◆◆
こちらも金属製で、波打った形状の変わったデザインになっています。
値段は高いですが性能は最高です。
デザインも含め私のお気に入りポップガード。

・K&M ポップガード (¥2,178 税込)
オススメ度 ◆◆◆
布製で安価な、いわゆる「初心者」向け。
安くてもしっかり使えるポップガードですが、作りはかなり”ちゃっちい”ので買い替え覚悟が必要です。
布製なので高域を落としたくない人には向きません。

②『マイクスタンドを使う』

これも当たり前に使ってるよって人がほとんどかと思います。

コンデンサーマイクを手で持って歌う人はいないと思いますが、カラオケのマイクのような形をした所謂ダイナミックマイクは手で持って歌うイメージが強いので、特に初心者の方は注意が必要です。

音源制作のレコーディングでは、基本的にマイクを手で持つことはありません。
腕の動きによってマイクが動いてしまい、均一な音質で録音できなかったり、マイクを触ることで発生するハンドリングノイズなどが常に付き纏います。

机に固定するアームタイプのものでも、床に立てて使うブームタイプのものでも大丈夫なので、マイクは必ずスタンドに固定して録音しましょう。

◇ オススメ商品 ◇
・TAMA MS205BK (¥5,808 税込)
オススメ度 ◆◆◆◆◆
床に立てるタイプの標準的なブームスタンドです。
TAMAは元々ドラムのメーカーで、スタンド系の安定性に定評があります。
日本のメーカーですし、まずこれを買っておけば間違いないと言える製品です。

・CLASSIC PRO MSB/BLACK (¥1,915 税込)
オススメ度 ◆◆◆
これも床に立てるタイプの標準的なブームスタンドですが、あまりにも安いので不安な方は「TAMA」の製品をオススメします。
重いマイクを使ったり、ポップガードをマイクと一緒のスタンドに取り付けたりすると重さに耐えられないかもしれません。

・CLASSIC PRO CDA20B (¥6,578 税込)
オススメ度 ◆◆◆◆◆
デスクの天板などに固定するタイプのアームスタンドです。
動画配信やゲーム実況をされている方がよく使っていますね。
しっかりした作りで、マイクの位置をサッと変えられるのでかなり便利です。

③『アンビエントフィルターを使う』

「それ何?」って方、結構多いと思うので機能や使い方も一緒にご紹介します。

一つ前で紹介したポップガードのように、マイクと一緒に使う機材です。
機材と言っても、機械的なめんどくさいヤツではありません。
マイクの周りにセットすればいいだけなので、使い方もいたって簡単です。

機能としてはたった一つ、

「部屋の反響音をマイクに乗せないようにする」

です。

録り音の反響音については長くなってしまうので別の記事でご紹介します。

簡単に言うと、どんな曲でも録り音は響いていない方が良いということです。
よくドライな音と言われますね。
反響音はミックスでいくらでも付け足すことができますが、消すことは基本的にできません。
(消せるソフトは一応ありますが、弊害も多くあるので使わないに越したことはありません)

と言っても厳密に0というのは不可能に近いので、少しでも0に近づけようという機材が、このアンビエントフィルターです。
こちらもいくつかオススメの商品をご紹介します。

◇ オススメ商品 ◇
・KAOTICA EYEBALL (¥27,500 税込)
オススメ度 ◆◆◆◆◆+
マイクに直接取り付けて使う設計で、マイクの周りを一周カバーしてくれるので効果は絶大です。
ええ、わかってます。高いですよね...。
もしかすると「使ってるマイクより高い」って人もいるのではないでしょうか。
でもこれははっきり言って最強です。
格段に音質が上がります。
歌ってみた宅録「三種の神器」のうちの一つです。
全員これ使って欲しい。
これはコンデンサーマイク用ですが、ダイナミックマイク用などもあるのでチェックしてみてください。

・AURALEX MudGuard v2 (¥18,480 税込)
オススメ度 ◆◆◆◆◆
吸音材で有名なAURALEXの商品です。
マイクの両サイドと背面のみを覆う設計なので、一つ目のKAOTICA EYEBALLよりは劣りますが、少しの反響程度であれば全然カットしてくれます。

・オフトゥン (¥???? 税込)
オススメ度 ◆◆◆◆
昔ながらの敷布団です。
メーカーなどはお好きなもので良いと思いますし、実家のタンスに眠ってるものを引っ張り出してきても良いと思います。
ポイントは、掛け布団ではなく敷布団、そしてずっしりと重いものを使うこと。
バネなどが入っている近代的なものはダメです。
理想は敷布団でマイクと自分の上下左右を覆うことですが、現実的ではないので、床、自分の後ろ、マイクの左右と後ろにセットすると良いと思います。
みんな大好きオフトゥン、結構効果ありますよ。

④『歌っている間は何にも触らない』

特に注意しないといけないのは、
マイク本体
ポップガード
マイクケーブル
マイクスタンド
マイクスタンドの脚
です。

たまにプロの方の映像でも口がポップガードに触れながら歌っているのを見ますが、エンジニアからするとやめて欲しいですね...。
普通にノイズというか雑音が入りますし、ほとんどのプロの方もカメラの回っていない本番レコーディングでは気をつけて録っています。

マイクスタンドやケーブルも触ってしまうと、振動が直接マイクに伝わってガタガタ、ゴンゴン音が入ってしまうので気をつけましょう。
マイクスタンドの脚も気付かず蹴ってしまわないように。

ヘッドホンも音が出るほどガシガシ触るのは良くないです。
ヘッドホンに手を添える程度ならOK。

⑤『ヘッドホンやイヤホンのボリュームに気を付ける』

モニター、返しとして使うヘッドホンやイヤホンからの音が漏れてしまうと、そのままマイクに乗ってしまいます。
密閉型と言われる音漏れの少ないヘッドホンでも、音量が大きいと普通に音漏れするので、できるだけ音量を抑えると良いです。

どうしても大きい音で聴きながら歌いたい」という方は、イヤホンの上からヘッドホンをかぶってみて下さい。
ポイントは、ヘッドホンからは音を出さないこと。
イヤホンから返しを聴いて、その上から音を出していないヘッドホンをかぶる事で音漏れを防ぐことができます。

イヤホンをインイヤーモニターなどにすると、より音漏れを防ぐことができます。

◇ オススメ商品 ◇
・SHURE SE215-CL-A クリア (¥11,792 税込)
オススメ度 ◆◆◆◆
インイヤーモニターの入門機。
かなり音漏れを防ぐことができますが、音質にこだわる人にはイヤホンとしてちょっと物足りないかもしれません。
これにダミーのヘッドホンをかぶれば音漏れ問題はクリアです。

⑥『音の出る服を着ない』

ここまで来ればなんとなく分かりますね。
例えばダウンジャケットやシャカシャカのジャージなどを着てレコーディングをすると、ちょっとした動作で服の擦れる音がマイクに乗ってしまいます。
綿素材などの音がしづらい服装でレコーディングしましょう。

服ではないですが、あるレコーディング現場に同行させて頂いた時、ボーカルの方が(V系のアーティストさん)でっかい五重くらいのチェーンを腰に巻いていて、その現場のレコーディングエンジニアさんに注意されていたのをよく覚えています。

◇ オススメ商品 ◇
・UNIQLO ヒートテックエクストラウォームUネックT 8分袖・極暖 (¥1,419 税込)
オススメ度 ◆◆◆◆◆
寒い季節、寒い日に。
レコーディング中はエアコンなどをつけられないので温かいインナーで勝負です。

・UNIQLO エアリズムUネックT 半袖 (¥1,089 税込)
オススメ度 ◆◆◆◆◆
暑い季節、暑い日に。
夏のレコーディングは本当に暑すぎて倒れそうになります。
汗の揮発を利用して体を冷やしましょう。

おわりに

ちょっと長くなってしまったのでこの辺でいったん切りたいと思います。
続編はまた後日。

①から⑥まで見ると分かりますが、全て
『声』以外の音をできるだけマイクに乗せないように
というお話でした。

これがしっかりとできているボーカルデータはどんどんエフェクト、編集をしていけるので自ずとクオリティも上がっていきます。

逆に雑音が多いと、したい編集が出来なかったり、使いたいエフェクトやエフェクトの強さを制限しなければいけないことが多くなってくるので、自然と処理の甘い低クオリティのミックスになってしまいます。

機材のグレードを上げるのも大切ですが、これが出来ていないと何の意味もなくなってしまうので是非実践してみて下さい。

あと、必ず自分で録り終えたデータを大きめの音でチェックしましょう。
意外と後からノイズに気付くことが多いです。

以上、RIONでした。
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