―「できる子」ほど、挑戦の経験が足りなくなる理由―
ギフテッドの子どもは、能力が高いからこそ、周囲から期待されます。
「頭がいいね」
「すぐ分かるね」
「何でもできるね」
そう言われることがあります。
しかし、その言葉が、子どもにとって重荷になることもあります。
なぜなら、ギフテッドの子の中には、失敗を極端に嫌がる子がいるからです。
この本では、才能を開花させるには、単に高い知能があるだけでは不十分だとされています。
高い能力に加えて、創造性や、課題へのコミットメント、つまりやり抜く力が必要になります。
しかし、この三つをそろえることは簡単ではありません。
特にギフテッドの子にとって難しいのが、失敗しながら経験を積み上げることです。
本来、子どもは失敗を通して学びます。
間違える。
やり直す。
少し工夫する。
もう一度挑戦する。
その繰り返しの中で、力は育っていきます。
ところが、ギフテッドの子は、もともと理解が早いことが多く、「分からない」「できない」という経験が少ないまま成長することがあります。
すると、初めてつまずいたときに、大きく崩れてしまいます。
「できない自分」に耐えられない。
「失敗するくらいなら、最初からやらない」
「どうせうまくいかないなら、やらない」
こうして、挑戦を避けるようになります。
一方で、簡単にできることについては、くり返し練習する意味を感じられません。
漢字練習、計算ドリル、反復課題。
本人からすると、「もう分かっていることを、なぜ何度もやるのか」と感じます。
そのため、練習量が不足し、学習習慣が身につきにくくなることがあります。
ここで大人が「飽きっぽい」「根気がない」と叱ってしまうと、子どもはさらに苦しくなります。
必要なのは、叱責ではなく、挑戦の設計です。
その子が少し難しいと感じる課題。
失敗しても笑われない環境。
結果だけでなく、試行錯誤を認める声かけ。
そして、くり返しの意味を本人が納得できる形で伝えること。
私は、ギフテッドの子の才能は「失敗できる場所」で育つと考えています。
完璧でなくてもいい。
最初からうまくできなくてもいい。
できないことに出会ったときこそ、才能が育ち始める。
保護者や先生がそう伝え続けることで、子どもは少しずつ、挑戦する力を取り戻していきます。
ギフテッドの子に必要なのは、ただ高度な課題を与えることだけではありません。
失敗しても、自分の価値が失われないと感じられる環境なのです。