トー横キッズから考える、これからの子ども支援
子どもを排除する社会から、受け止める社会へ
トー横キッズという言葉は、ときに強い印象を持って語られます。
夜の街に集まる子どもたち。
家に帰らない子どもたち。
学校に行けない子どもたち。
危険な人間関係に近づいてしまう子どもたち。
大人から見れば、心配で、怖くて、時には理解できない存在に見えるかもしれません。
けれど、このシリーズを通して見てきたように、彼らは単なる「問題のある子どもたち」ではありません。
家庭で苦しんできた子。
学校で傷ついてきた子。
いじめを受けた子。
先生や大人の言葉に深く傷ついた子。
不登校になった子。
SNSの中で孤独を深めた子。
発達特性やギフテッド、2E傾向があり、周囲に理解されなかった子。
そうした子どもたちが、家庭でも学校でもない場所に、自分の居場所を探しているのです。
もちろん、夜の街は安全な場所ではありません。
子どもを利用しようとする大人がいます。
薬、性、金銭、犯罪、暴力に巻き込まれる危険があります。
だから、子どもたちを守らなければなりません。
でも、守るということは、ただ追い払うことではありません。
叱ることだけでもありません。
補導することだけでもありません。
本当に必要なのは、子どもが危険な場所に行かなくてもすむ社会をつくることです。
子どもが「助けて」と言える場所。
名前を言わなくても相談できる場所。
何も話さなくても、そこにいていい場所。
お腹を満たせる場所。
安心できる大人に出会える場所。
学校や家庭以外にも、「ここにいていい」と思える第三の居場所。
そうした場所が、社会の中にもっと必要です。
子どもは、最初から危険な道を選びたいわけではありません。
本当は、誰かに気づいてほしいのです。
分かってほしいのです。
責められる前に、話を聞いてほしいのです。
「あなたは悪くない」
「つらかったんだね」
「ここから一緒に考えよう」
そう言ってくれる大人を探しているのかもしれません。
私たち大人がすべきことは、子どもを裁くことではありません。
子どもが出しているサインに気づくことです。
夜の街に向かったという行動だけを見るのではなく、その前に何があったのかを見つめることです。
家庭で何に苦しんでいたのか。
学校で何に傷ついていたのか。
SNSでどんな孤独を抱えていたのか。
なぜ、近くの大人に助けを求められなかったのか。
そこを見ずに、「行くな」「帰れ」「ちゃんとしろ」と言うだけでは、子どもはさらに遠くへ行ってしまいます。
必要なのは、正論だけではありません。
安心できる関係です。
危険な大人より先に、信頼できる大人が子どもとつながることです。
夜の街より先に、昼の社会の中に居場所を用意することです。
子どもが自分を責め続ける前に、「あなたにはまだ未来がある」と伝えることです。
トー横キッズの問題は、歌舞伎町だけの問題ではありません。
日本中の家庭や学校、地域の中で起きている、子どもの孤独の問題です。
学校に合わない子ども。
家庭で本音を言えない子ども。
発達特性やギフテッド、2Eのために誤解される子ども。
いじめや不適切な指導で傷ついた子ども。
自分の居場所がどこにもないと感じている子ども。
そうした子どもたちは、どの地域にもいます。
だからこそ、私たちは考えなければなりません。
子どもを排除する社会でよいのか。
子どもを管理するだけの社会でよいのか。
それとも、子どもの苦しさを受け止め、安心できる場所を増やしていく社会をつくるのか。
私は、後者でありたいと思っています。
子どもは、居場所があれば変わります。
信頼できる大人に出会えば、少しずつ言葉を取り戻します。
お腹いっぱい食べられる場所があれば、表情がやわらぎます。
好きなことを安心して話せる場所があれば、「自分にも何かできるかもしれない」と思えるようになります。
否定されない時間があれば、自分を責める気持ちが少しずつほどけていきます。
子ども支援に必要なのは、立派な言葉だけではありません。
子どもが実際に行ける場所。
会える大人。
食べられるご飯。
話せる時間。
失敗してもまた戻れる関係。
そうした具体的な安心です。
そして、それは保護者にとっても必要です。
子どもが不登校になる。
夜に出歩く。
学校で傷つく。
発達特性やギフテッド、2Eのことで悩む。
そんなとき、保護者は深く苦しみます。
自分の育て方が悪かったのではないか。
もっと早く気づくべきだったのではないか。
このまま将来は大丈夫なのか。
そうやって、一人で抱え込んでしまう方もいます。
でも、どうか知っておいてください。
お子さんが苦しんでいることは、保護者の愛情不足の証明ではありません。
お子さんが学校に合わないことは、家庭の失敗ではありません。
必要なのは、親子を責めることではなく、親子を支えることです。
子どもにも、保護者にも、安心できる第三のつながりが必要なのです。
私は、不登校、ギフテッド、2E、発達特性、いじめ経験のあるお子さんと、そのご家庭を支える教育相談を行っています。
また、子どもたちが安心して過ごせる第三の居場所として、「ギフテッド食堂」にも取り組んでいます。
ギフテッド食堂は、ただ食事をする場所ではありません。
学校でも家庭でもない、子どもが少し肩の力を抜き、自分のままでいられる場所です。
人間関係に疲れた子。
学校で傷ついた子。
周囲と合わずに孤独を感じている子。
自分の特性を理解してもらえず苦しんでいる子。
そうしたお子さんにとって、私が安心できる大人の一人になれるかもしれません。
お子さんの居場所は、学校だけではありません。
家庭だけで抱え込む必要もありません。
その子に合った学び方と、心安らぐ居場所を、一緒に探していきます。
トー横キッズを責める前に、私たち大人が考えたいこと。
それは、子どもたちが夜の街でしか息ができない社会を、このままにしてよいのかということです。
子どもたちが昼の光の中で、「ここにいていい」と思える場所を増やしていくこと。
その子がもう一度、自分の未来を信じられるように支えること。
それが、これからの子ども支援に必要な希望なのだと思います。