トー横キッズ 第12話

記事
コラム
トー横キッズと男の子の孤独
強がる少年たちの、言葉にならない苦しさ

夜の街にいる子どもたちの中には、男の子たちもいます。
けれど、男の子の苦しさは、見えにくいことがあります。
泣かない。
弱音を吐かない。
助けてと言わない。
ふざける。
強がる。
乱暴な言葉を使う。
大人から見ると、「反抗的な子」「危ない子」「問題行動をする子」に見えるかもしれません。
でも、その奥には、言葉にならない寂しさが隠れていることがあります。
男の子は、小さい頃から「強くあれ」という空気の中で育つことがあります。
泣くな。
弱音を吐くな。
男なら我慢しろ。
情けないことを言うな。
そうした言葉を直接言われなくても、社会の空気として感じ取っている子は少なくありません。
だから、本当はつらくても、つらいと言えない。
本当は怖くても、怖いと言えない。
本当は誰かに助けてほしくても、助けてと言えない。
その苦しさが、怒りや無気力や夜遊びとして表れることがあります。
学校でうまくいかない。
友達関係で傷つく。
先生に叱られる。
家庭で期待に応えられない。
勉強についていけない。
逆に、頭の中では深く考えているのに、周囲と話が合わない。
そうしたことが積み重なると、男の子は心の中で孤立していきます。
けれど、その孤立を「寂しい」とは言えません。
代わりに、ゲームに逃げる。
スマホに逃げる。
夜の街に出る。
仲間と強がる。
危険な大人に近づく。
「どうでもいい」と言う。
それは、本当にどうでもいいのではないかもしれません。
どうしたらいいか分からないのかもしれません。
男の子の孤独は、怒りの形を取ることがあります。
親に強く当たる。
物に当たる。
学校の話をされると黙る。
部屋に閉じこもる。
急に外に出ていく。
大人はその姿を見て、叱りたくなります。
「何を考えているんだ」
「ちゃんとしなさい」
「逃げてばかりいるな」
でも、叱る前に見てほしいのです。
その怒りの下に、傷ついた気持ちはないでしょうか。
その沈黙の奥に、誰にも言えない不安はないでしょうか。
その強がりの裏に、「本当は分かってほしい」という願いはないでしょうか。
トー横に向かう男の子たちは、危険なことをしたいだけではないと思います。
そこに行けば、家でも学校でもない自分でいられる。
失敗を知られていない。
成績や進路で評価されない。
「ちゃんとしろ」と言われない。
ただ一緒にいる仲間がいる。
それだけで、少し息ができる子もいるのかもしれません。
もちろん、夜の街は安全な場所ではありません。
男の子も、犯罪に巻き込まれることがあります。
薬や暴力、金銭トラブル、搾取、危険な人間関係に取り込まれることがあります。
「男の子だから大丈夫」ではありません。
男の子も守られるべき子どもです。
大人ができることは、ただ厳しくすることではありません。
男の子が弱音を吐いても大丈夫な関係をつくることです。
「男の子なんだから」ではなく、
「つらいときは、つらいと言っていい」
「怖かったなら、怖かったと言っていい」
「怒っているなら、その奥に何があるか一緒に考えよう」
そう伝えることです。
男の子は、真正面から「何がつらいの」と聞かれても答えられないことがあります。
だから、会話の入口は別のところにあってもいいのです。
ゲームの話。
音楽の話。
スポーツの話。
動画の話。
好きな食べ物の話。
将来の夢ではなく、今日少し面白かったこと。
そうした何気ない会話の中で、少しずつ心がほどけることがあります。
男の子に必要なのは、立派な説教ではありません。
安心して黙っていられる大人。
すぐに正さず、まず聞いてくれる大人。
失敗しても見捨てない大人。
強がりの奥にある寂しさを、責めずに見てくれる大人です。
トー横キッズと呼ばれる男の子たちの中には、本当は助けを求めている子がいるかもしれません。
でも、その助けの求め方が、乱暴だったり、不器用だったり、危なっかしかったりするのです。
だからこそ、大人はその表面だけで判断しないことが大切です。
問題行動の奥に、孤独があるかもしれない。
反抗の奥に、傷つきがあるかもしれない。
無気力の奥に、失望があるかもしれない。
夜の街へ向かう足の奥に、「どこかに自分の居場所はないか」という願いがあるかもしれない。
そう見つめることが、支援の始まりです。
男の子は、強くなければならないわけではありません。
泣いてもいい。
迷ってもいい。
助けてと言ってもいい。
うまく言葉にできなくてもいい。
その子が自分の苦しさを少しずつ表せる場所があれば、未来は変わります。
夜の街で強がるしかなかった少年が、安心できる場所で少しずつ本音を出せるように。
「どうでもいい」と言っていた子が、「本当はこうしたかった」と言えるように。
大人ができることは、少年たちを力で押さえ込むことではありません。
その子の孤独に気づき、言葉にならない苦しさを受け止めることです。
強がる少年たちにも、安心して弱くなれる場所が必要です。
その場所をつくることが、私たち大人の役割なのだと思います。
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