トー横キッズ 第8話

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コラム
トー横キッズを救うのは、正論ではない
必要なのは、叱責ではなく“安心できる関係”

トー横に集まる子どもたちを見て、大人はつい正論を言いたくなります。
「そんな場所に行ってはいけない」
「危ない人に近づいてはいけない」
「家に帰りなさい」
「学校に行きなさい」
「将来のことを考えなさい」
どれも、間違った言葉ではありません。
夜の街には危険があります。
子どもを利用しようとする大人もいます。
薬や犯罪、性的な被害に巻き込まれることもあります。
だから、大人が心配するのは当然です。
けれど、正しいことを言えば、子どもの心が戻ってくるのでしょうか。
現実には、そう簡単ではありません。
子どもは、正論を知らないから夜の街に向かうわけではありません。
危ないことを、どこかで分かっている子もいます。
家に帰った方がいいことも、学校に行った方が安心だと言われることも、頭では分かっているかもしれません。
それでも帰れない。
それでも行けない。
そこに、その子の苦しさがあります。
子どもが本当に求めているのは、説教ではないことがあります。
「どうしてそんなことをしたの」と問い詰められることでもありません。
「あなたは間違っている」と責められることでもありません。
本当は、ただこう言ってほしいのかもしれません。
「無事でよかった」
「つらかったんだね」
「ここにいていいよ」
「何があったのか、少しずつでいいから聞かせて」
「あなたを責めたいんじゃない。守りたいんだよ」
子どもが危険な場所に向かうとき、その奥には、たいてい孤独があります。
家で分かってもらえなかった。
学校で傷ついた。
友達関係で疲れた。
自分の特性を理解されなかった。
助けてと言っても、どうせ怒られると思ってしまった。
そうした経験が積み重なると、子どもは大人を信じられなくなります。
だからこそ、いきなり正論をぶつけても、子どもは心を閉ざしてしまいます。
大人に必要なのは、まず「正しいことを言う力」よりも、「この人なら話しても大丈夫」と思ってもらえる関係です。
もちろん、危険な行動を見過ごしてよいわけではありません。
深夜徘徊、薬、犯罪被害、性的搾取につながる危険があるなら、止めなければなりません。
必要であれば、警察、児童相談所、医療機関、自治体の相談窓口などにつなぐことも大切です。
しかし、そのときにも、子どもを「悪い子」として扱わないことです。
「あなたを罰するためではなく、守るために動いている」
その姿勢が伝わるかどうかで、子どもの受け取り方は大きく変わります。
安心できる関係とは、甘やかすことではありません。
何をしてもいいと言うことでもありません。
安心できる関係とは、危険なことは危険だと伝えながらも、子どもの存在そのものは否定しない関係です。
「その行動は危ない」
「でも、あなたが大切な存在であることは変わらない」
この二つを同時に伝えることです。
トー横に集まる子どもたちに必要なのは、管理だけではありません。
監視だけでもありません。
まず、人として受け止められる経験です。
名前を呼んでもらうこと。
話を最後まで聞いてもらうこと。
お腹を満たせること。
何も話さなくても、そこにいていいと思えること。
失敗しても、また来ていいと言われること。
そうした小さな安心の積み重ねが、子どもの心を少しずつほどいていきます。
子どもは、すぐには変わらないかもしれません。
一度話を聞いたからといって、すぐに夜の街に行かなくなるわけではないかもしれません。
約束を守れない日もあります。
また危ない場所へ向かってしまう日もあります。
大人は、がっかりするかもしれません。
それでも、そこで見捨てないことが大切です。
「また来ていい」
「また話していい」
「何度でも一緒に考える」
そう言ってくれる大人がいることは、子どもにとって大きな命綱になります。
正論は、子どもを一瞬黙らせるかもしれません。
でも、安心できる関係は、子どもを少しずつ生きる方へ戻していきます。
叱責は、子どもを遠ざけることがあります。
でも、信頼は、子どもをつなぎ直します。
大人がすべきことは、子どもを完全に管理することではありません。
その子が危険な場所に行かなくてもすむように、安心できる場所を増やすことです。
「ここなら大丈夫」と思える大人を増やすことです。
「自分は見捨てられていない」と感じられる関係をつくることです。
トー横キッズを救うのは、正論だけではありません。
その子の痛みを見つめるまなざしです。
その子を責めずに守ろうとする手です。
その子がもう一度、人を信じてみようと思える関係です。
子どもは、正しい言葉だけでは戻ってきません。
でも、温かい関係の中でなら、少しずつ戻ってこられることがあります。
夜の街でしか息ができなかった子が、昼の光の中で安心して過ごせるように。
大人に必要なのは、説教ではなく、居場所をつくる覚悟なのだと思います。
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