トー横キッズ 第7話

記事
コラム
トー横キッズを狙う大人たち
子どもを守るために、大人が知っておくべき危険

夜の街には、光があります。
明るい看板。
にぎやかな音楽。
誰かとつながれるような空気。
ひとりぼっちだった子どもにとって、その場所は、少しだけ息ができる場所に見えるかもしれません。
けれど、その光の中には、危険もあります。
子どもの孤独につけ込む大人がいるからです。
最初は、優しい言葉で近づいてきます。
「大丈夫?」
「家に帰りたくないの?」
「ご飯食べる?」
「泊まるところある?」
「困っているなら助けるよ」
家にも学校にも安心できる場所がなかった子どもにとって、その言葉は救いに聞こえることがあります。
誰にも分かってもらえなかった。
親には怒られる。
先生には相談できない。
友達にも本音を言えない。
そんなとき、初めて自分を気にかけてくれた大人のように感じてしまうのです。
でも、その優しさが、本当の優しさとは限りません。
子どもを利用しようとする大人がいます。
お金を渡して、支配しようとする人がいます。
泊まる場所を与える代わりに、逃げられない関係を作ろうとする人がいます。
薬や酒を使って、判断力を奪おうとする人がいます。
性的に利用しようとする人がいます。
犯罪に巻き込もうとする人がいます。
子どもは、最初から危険な大人を選んでいるわけではありません。
寂しかったのです。
怖かったのです。
誰かに助けてほしかったのです。
だからこそ、悪意ある大人は、その心のすき間に入り込んできます。
「自分だけは味方だよ」
「親より分かってあげられる」
「ここにいればいい」
そう言いながら、少しずつ子どもの自由を奪っていくことがあります。
とても怖いのは、子ども自身が「利用されている」と気づきにくいことです。
自分を助けてくれた人だと思ってしまう。
自分で選んだ関係だと思ってしまう。
帰る場所がないから、離れられない。
相談したら怒られると思って、誰にも言えない。
こうして、子どもは危険な関係の中に閉じ込められていきます。
大人は、ここを知っておく必要があります。
子どもを守るために必要なのは、「そんな場所に行くな」と叱ることだけではありません。
危険な大人よりも先に、信頼できる大人が子どもとつながることです。
子どもが夜の街で優しさを探す前に、現実の中で安心できる大人に出会えることです。
もし子どもが、危険な大人と関わっているかもしれないと感じたら、最初に必要なのは怒鳴ることではありません。
「なんでそんな人と会ったの」
「何をしていたの」
「恥ずかしいことをするな」
そう責めてしまうと、子どもは口を閉ざします。
本当のことを言わなくなります。
次はもっと隠れるようになります。
だからこそ、まず伝えるべきなのは、
「無事でよかった」
「あなたを責めたいわけじゃない」
「危ない目にあってほしくない」
「一緒に安全な方法を考えよう」
という言葉です。
もちろん、緊急の危険がある場合は、警察や専門機関につなぐ必要があります。
犯罪被害、性的搾取、暴力、薬物、脅し、家に帰れない状況があるなら、家庭だけで抱え込んではいけません。
警察、児童相談所、自治体の相談窓口、若者支援の窓口などにつながることが必要です。
東京都の「きみまも」は、「トー横」問題をはじめ、悩みを抱える青少年・若者を対象にした総合相談窓口で、社会福祉士や公認心理師などの相談員がいる安心できるスペースとして設けられています。こうした窓口があること自体、子どもたちを孤立させず、被害から守るためには、街の中に相談できる場所が必要だということを示しています。
トー横キッズを狙う大人たちの問題は、子どもだけの問題ではありません。
子どもを守る社会の側の問題です。
なぜ、その子は悪意ある大人の優しさにすがらざるを得なかったのか。
なぜ、家や学校や地域の中に、先に助けてくれる大人がいなかったのか。
なぜ、「助けて」と言える場所がなかったのか。
そこを考えなければなりません。
子どもを危険から守るには、禁止だけでは足りません。
叱責だけでも足りません。
管理だけでも足りません。
必要なのは、安心できる関係です。
帰れる場所です。
逃げ込める場所です。
お腹を満たせる場所です。
何も話さなくても、そばにいていい場所です。
子どもは、悪い大人に近づきたいのではありません。
本当は、安心できる大人に見つけてほしいのです。
「あなたを利用する人から守りたい」
「あなたを責めたいのではなく、大切にしたい」
「ひとりで抱えなくていい」
そう言ってくれる大人を待っているのかもしれません。
夜の街の危険を知ることは、子どもを怖がらせるためではありません。
子どもを守るためです。
そして、子どもが危険な場所に行かなくてもすむように、安心できる居場所を増やしていくためです。
トー横キッズを狙う大人たちから子どもを守るために、私たち大人ができること。
それは、子どもを責めることではありません。
悪意ある大人より先に、子どもの孤独に気づくことです。
危険な関係に取り込まれる前に、安心できる関係でつながることです。
子どもが夜の街で救いを探さなくてもいいように、昼の光の中に、守られる場所をつくることです。
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