トー横キッズ 第6話

記事
コラム
トー横キッズとオーバードーズ
薬を飲む子どもを責める前に、その痛みを見つめる

夜の街に集まる子どもたちを語るとき、避けて通れない問題があります。
オーバードーズ。
市販薬を、本来の用量を超えて大量に飲んでしまう行為です。
ニュースでは、トー横キッズとオーバードーズが結びつけて報じられることがあります。
大人から見ると、理解しがたい行動に見えるかもしれません。
「なぜそんな危ないことをするのか」
「命を大切にしてほしい」
「ふざけているのではないか」
そう感じる人もいると思います。
もちろん、オーバードーズは危険です。
体に大きな負担がかかります。
救急搬送されることもあります。
依存につながることもあります。
命に関わることもあります。
だから、絶対に軽く見てはいけません。
けれど、同時に考えたいのです。
その子は、本当にただ遊び半分で薬を飲んでいるのでしょうか。
その奥には、言葉にできない苦しさがあるのではないでしょうか。
厚生労働省の資料でも、市販薬の乱用は若者の間で広がりつつあり、SNSなどを通して体験談や薬の情報に触れやすくなっていることが指摘されています。特に10代から20代の若い世代で問題が深刻化しており、支援や予防啓発の必要性が示されています。
薬を飲む子どもたちの中には、ただ快楽を求めているだけではない子がいます。
眠れない。
不安が消えない。
家にいるのがつらい。
学校で傷ついた。
自分の存在が分からない。
誰にも本音を言えない。
生きている感覚が薄い。
そうした苦しさを、一瞬だけでもまぎらわせようとしていることがあります。
もちろん、だからといってオーバードーズを認めてよいわけではありません。
危険な行為は止めなければなりません。
でも、止め方を間違えてはいけないのです。
「何をやっているんだ」
「馬鹿なことをするな」
「親に迷惑をかけるな」
そう責めるだけでは、子どもはもっと本音を隠します。
次は見つからないようにやるかもしれません。
もっと危険な相手に頼るかもしれません。
もっと遠くへ逃げてしまうかもしれません。
本当に必要なのは、まず安全を確保すること。
そして、そのあとで、なぜそこまで追い詰められていたのかを見つめることです。
「薬を飲まないで」と伝えるだけでは足りません。
「薬を飲みたくなるほど、何が苦しかったのか」を聞く必要があります。
子どもは、簡単には話してくれないかもしれません。
黙るかもしれません。
怒るかもしれません。
「別に」と言うかもしれません。
でも、それでも大人があきらめずに、責めずに、そばにいることが大切です。
「危ないことだから止めたい」
「でも、あなたを責めたいわけじゃない」
「何がつらかったのか、一緒に考えたい」
「あなたの命を守りたい」
この姿勢が、子どもにとって大きな支えになります。
トー横に集まる子どもたちの中には、家庭にも学校にも安心できる場所がなかった子がいます。
誰かに助けを求めたくても、どう言えばいいか分からなかった子がいます。
大人を信じられなくなっていた子がいます。
そんな子どもたちにとって、薬は一時的な逃げ場になってしまうことがあります。
けれど、本当に必要なのは薬ではありません。
安心できる人です。
夜の街ではなく、昼の光の中で休める場所です。
自分を否定されずに話せる時間です。
危険な行為に向かわなくても、苦しさを受け止めてもらえる関係です。
東京都の若者向け相談窓口「きみまも」も、薬のトラブル、学校や家庭に居場所がないこと、大人を信用できないことなどを相談できる悩みとして掲げています。これは、オーバードーズを単なる個人の問題ではなく、孤立や居場所のなさと結びついた支援課題として見ているからだと思います。
子どもが薬に手を伸ばす前に、手を伸ばせる大人がいること。
夜の街に行く前に、安心して行ける場所があること。
つらさを言葉にできなくても、そばにいてくれる人がいること。
それが、子どもを守る力になります。
オーバードーズをする子どもを、ただ責めないでください。
もちろん、命を守るために止める必要はあります。
医療や専門機関につなげる必要もあります。
でも、その子を「問題のある子」として見るのではなく、「痛みを抱えた子」として見てほしいのです。
子どもは、危険な行為をしたくて生きているのではありません。
本当は、苦しさから少しでも逃れたいのです。
本当は、誰かに見つけてほしいのです。
本当は、「ここにいていい」と言ってくれる場所を探しているのです。
だからこそ、私たち大人に必要なのは、叱責だけではありません。
見守ること。
つながること。
医療や支援につなぐこと。
そして、その子が危険な方法でしか苦しさを表現しなくてすむように、安心できる居場所を増やしていくことです。
薬を飲む子どもを責める前に。
まず、その痛みを見つめたい。
その子がもう一度、自分の命を大切にしたいと思えるような関係を、社会の中につくっていきたいのです。
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