【患者情報(架空事例)】
・患者:79歳 男性・主疾患:早期胃がんに対する腹腔鏡下胃部分切除術(術後20日目)・既往歴:高血圧、前立腺肥大症、慢性便秘・生活歴:妻と2人暮らし。築40年の戸建て住宅に在住。室内は段差が多く、トイレや浴室、階段昇降にも不便がある。手すりなどの福祉用具は未設置。
<入院経過>・術後の経過は良好で、創部や消化器症状、栄養状態は安定している。治療はすでに終了しているが、術後の安静期間が長かったため、離床や歩行の再開が遅れた。・現在は杖歩行が可能だが、歩行距離は病棟内30〜50m程度に限られ、階段昇降や外出レベルの動作は不可能。
<活動状況>・トイレや洗面などの動作も見守りが必要。ベッド上で過ごす時間が長く、活動量が著しく低下している。日中の覚醒も不安定で、疲労感を訴える場面が多い。・「退院できるならしたいけど、自信がない」「家の階段は無理だと思う」と、退院に対する不安を口にしている。
<家庭環境と支援状況>・妻は同年代であるが、腰痛を抱えており、継続的な介助は困難。家の改修や福祉サービス導入については「退院が決まってから考えよう」と準備が進んでいない。・訪問看護・介護保険申請・地域包括支援センターなどの連携は未着手。
【アセスメント・分析・解釈】
■原因・誘因(自宅復帰困難の背景機序)
本患者は術後の身体的安静期間が長期化したことにより、筋力低下と持久力の低下が進行し、身体機能の著明な低下をきたしている。加齢に伴い筋肉量が減少しやすい(サルコペニア)背景に加え、ベッド上生活の継続は廃用症候群を招きやすく、結果としてADL全般が低下している。
さらに、在宅環境には段差・階段・狭い動線など物理的バリアが多く存在し、現在の患者の身体能力では安全に生活動作を行うことが困難である。加えて、妻は介護支援が難しい状況にあり、外部サービスの導入準備も未整備であるため、社会的支援の欠如が自宅復帰をさらに困難にしている。
本人も「帰りたいが不安」と言及しており、回復と現実の生活とのギャップを自覚し始めているが、環境調整や退院支援の具体的準備が不足している現状では、退院を現実的な選択肢とすることが難しい。
■成り行き(放置した場合の予測経過)
・筋力低下・持久力低下がさらに進行し、歩行やADLの自立が困難になる・ベッド上中心の生活が長期化 → 廃用症候群進行 → 転倒・褥瘡・認知機能の低下・物理的バリアの多い在宅環境によって転倒や事故のリスクが高まる・家族の介護負担が増大し、在宅生活継続が困難に → 早期の再入院や施設入所の可能性・支援体制が整わないまま退院 → 医療・介護資源との接続不良 → 健康管理の破綻
■看護の方向性(自宅復帰の準備と支援)
・現在の身体機能と生活環境のギャップを把握し、患者・家族にわかりやすく共有する・リハビリスタッフと連携し、活動量・筋力の評価と段階的な強化支援を行う・自宅内の生活動線(トイレ・浴室・階段など)について具体的な支障予測を立て、福祉用具・住宅改修の必要性を明確化する・地域包括支援センター・MSWと連携し、介護保険サービスの導入・訪問看護等の調整を早期に開始する・患者の退院後の生活を具体的にイメージさせることで、「ただ帰る」から「安全に帰る」への意識変容を促す・退院後のサポートが整っていることへの安心感を与えることで、不安軽減と活動意欲の向上を図る
【関連図・全体像】
・術後安静の長期化→ 筋力・持久力低下→ 活動意欲の低下→ ADL低下・歩行困難→ 自宅生活の自立困難
・加齢・サルコペニア→ 身体的回復の遅延→ 廃用進行→ 転倒・再入院リスク上昇
・自宅環境の物理的バリア→ 階段・段差・狭い浴室→ 移動・排泄・入浴が危険に→ 家族の介助力では対応困難
・社会的支援体制の未整備→ 福祉サービス未導入→ 訪問看護・住宅改修未開始→ 退院後の生活に見通しが立たない
・退院準備不足→ 退院後の不安・健康管理の困難→ 転倒・事故 → 再入院・施設入所
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