ツイノベ 351-355

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朝、目覚めると体が透明になっていた。血管も筋肉も見えなくて、まるでガラス細工の風鈴にでもなったみたいだ。窓から入り込む風が私の体を揺らすと、リリン、リリンと音が鳴る。『透明になって誰からも忘れ去られたい』と、そう願ってしまったからだろうか。リリン、リリンと鈴がまた鳴った/№351 少女風鈴

海水の雨が降ります。小学校は錆びて朽ち果てます。今日も空ではくじらが泳いでいました。街に迷い込んだくじらは、親の元へと帰れず涙を流しました。そこに傘を差した女の子がやってきて「一緒に探してあげる」と言いました。くじらは女の子を背中に乗せます。1人と1匹の冒険が始まりました/№352 空のくじら

男子三人で廃墟を訪れていた。雨で地面がぬかるんでおり、ズッ、ズッ、ズッと鈍い足音が聞こえてくる。みんな嫌な気配を感じたのか、後ろを振り向くと息を整える者、カメラを構える者、正面を見据える者と三者三様の反応だった。一人が半狂乱になって僕に襲いかかってくる。気づいてしまった/№353 まぎれる

図書室の本から栞が切り取られる事件が起きた。犯人は図書委員の女の子だ。「栞なんかあるから飽きるんだよ。最後まで一気にパーっと読んじゃえばいいの」と笑う。読みかけの文庫本に目を落とす。「いつか、忘れてしまう今日だね」と青い栞のミサンガを、くちびるでほどきながら笑っていた/№354 青い栞

中学校では『そっくりさん』という噂が流行っていた。女の子の顔写真を用意して「そっくりさん、お越しください」と唱えると、見た目が同じ人が現れるらしい。でも、噂はやっぱり嘘だった。女の子に声をかける。「どうしたの?」「ううん。なんでもない」と、女の子は写真を破り捨てて笑った/№355 そっくりさん

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