ツイノベ 296-300

記事
小説
「ひな人形を見に行ってくる」と娘が家を飛び出した。私も前に見せてもらったが、お隣に越してきた老夫婦の家には立派なひな人形が飾られている。まるで本物の人と勘違いするくらいに。いつのまにか空き地になったお隣を眺める。ひな人形の姿が頭から離れない。あれから娘は行方不明になった/№296 ひな人形

「『月が綺麗ですね』って知ってる?」と、鏡に向かって指で広角を上げている彼女に質問する。「知らない。なにそれ?」「夏目漱石がI love youをそう和訳したんだって」「ふーん」「君ならどう和訳する?」「『作り笑いが下手になってしまった』かなぁ」と言って、彼女は鏡ごしにほほえんだ/№297 月が綺麗ですね

子どものころ、雨の日にだけ見える友達がいた。いつのまにか部屋の中にいて「わたし、雨のひはそとであそばないといけないから」と困りながら笑う。彼女がどこから来て、どこへ消えるのか。大人になった今でもわからない。遠い日の思い出だ。ヘッドフォンで耳をふさぐ。雨の音だけが聞こえた/№298 雨うつつ

「××君が××さんの給食費を盗んだと思う人」と先生が質問する。生徒達のほとんどが次々に手を上げていく。僕は本当の犯人を知ってるけどこわくて言えなかった。××君は「僕が盗みました」と身に覚えのない自白をする。多数決で決まったことは、少数派となった人の「本当」になってしまうのだ/№299 少数欠

僕の作ったアプリの感想を見ると「リリース以降、特に面白いイベントがない」「登場人物が少ない」「課金したのに恩恵がない」「何度も同じバグが発生する」と散々だった。もう、潮時なのだろう。説明文に「『僕の人生』は二十七歳をもって、サービス終了とさせていただきます」と書き込んだ/№300 サービス終了

サービス数40万件のスキルマーケット、あなたにぴったりのサービスを探す