ツイノベ 301-305

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誰もいない体育館に入って椅子をひとつ置く。今日は中学校の卒業式だ。電気が消えて暗い中、壇上を見つめる。本当ならみんなで卒業式をできたんだろう。まさか急にみんなと会えなくなるなんて。ふと、誰かが入ってきて体育館が明るくなる。「死んじゃったあの子、一緒に卒業したかったなぁ」/№301 3月9日

アフロの友人が「これ見て」と頭を下げると、タマゴがちょこんと乗っかっていた。親鳥が巣と間違えて産んでしまったらしい。ひな鳥はすくすくと成長して、代わりに友人がやつれていった。ある日、虚ろな目をした友人がふらふらと屋上に進んでいく。柵を飛び越えるとアフロから鳥が羽ばたいた/№302 頭鳥化操

メールの返信がないまま、9年間が経った。思い出はいつのまにか病葉になってしまう。夜患いの朝を泳いでいた。気づけばきみより歳上になってしまった。狗尾草が揺れる。言葉が失われた。手を合わせて、祈る。命は不平等だ。でも、それでも。春風が吹いて振り返ると、きみの忘れ音が聞こえた/№303 Re:Re:

深刻なマスク不足が続いて、買い占めや高額に転売されたりする。外で咳をしようもんなら犯罪者扱いだ。みんなもマスクが足りないのだろう。ネットでは予防マウントやストック不足を馬鹿にした。嫌い、嫌い、嫌い。醜い本音を隠す為に、笑顔型マスクで顔を覆い被せる。表情はにこやかになった/№304 覆面

「いちにちいちぜん」がおかあさんのくちぐせでした。「あなたのため。みんなのため」とわたしにいいきかせました。だからいちにちいちぜんがあたりまえなんだとおもいました。みんなはへんだとわらいました……。……。……。「続いてのニュースです。○県×市で餓死した女の子が見つかり――」/№305 いちにちいちぜん

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