ツイノベ 306-310

記事
小説
海外旅行から帰ったあと、僕はコロを飼いました。でもコロは繁殖力が高いから、みんなもコロを飼いました。みんなコロに夢中で、学校には誰も登校しなくなりました。テレビもネットもコロの話題で持ちきりです。コロの餌がありません。本日は入荷しておりません。街から人が消えていきました/№306 コロ

明け方、歓楽街でバイトを始めた彼女が帰ってきた。絨毯にはウイスキーと煙草の灰、猫の毛が交じり合っている。彼女が眠ったのを見届けたあと僕は始発に乗った。小田急線の窓から朝日が射し込む。未来も、仕事も、お金も、何もなかった。何者かになれると思っていた。始発のはずだったんだ/№307 名前のない街

いっそ飛び込んでしまおうと駅のホームに立つ。ふいに肩を叩かれて振り向くと怪しい男が佇んでいた。男から「楽しくなる薬がありますよ」と飴を手渡される。どうせ死ぬなら。そう思って飴を舐めると、ヘリウムガスを吸ったように声が高くなって、思わずふふっと笑う。今日はもうやめておくか/№308 楽しくなる薬

いかにも柄の悪そうな男がコンビニに入ってくると、無愛想に「メビウス1箱」とだけ答える。私が「あの、番号でお願いします」と返すと「お客様は神様だぞ! さっさとしろ!」と怒鳴られた。先輩に愚痴ると「神様は神様でも疫病神様だったな」と笑う。なるほど、疫病神様かと思って私も笑った/№309 厄病神様

廃夢処理場に訪れた。ガラクタの山になった夢を清掃員のおじさんが片付ける。扱いきれなくなった夢、身の丈に合わない夢。軽い気持ちで見た夢。勝手に生んで、簡単に捨てていく。この世界は夢に破れた人で溢れていた。今、夢の残骸が空から降り注ぐ。『小説家になりたい』という、誰かの夢が/№310 廃夢処理場

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