ツイノベ 311-315

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久しぶりに銭湯へ行った。大きい湯船でのんびりしていると、老人が「カポーン、カポーン」と声に出していた。まるでししおどしそのものだ。「なにしてるんですか?」「いやね、これが私の仕事なんですよ」と喉を叩く。不思議な仕事もあるんだなと湯船から出る。銭湯には老人の良い声が響いた/№311 ししおどしの老人

仕事の疲れ。人間関係。暗いニュース。いっそ死んでしまおうかとも思った。そんな毎日に辟易して無人島への移住を決めた。島には人間の言葉を喋るどうぶつ達で溢れている。ワニ、ねずみ、もぐら、いぬ。みんな幸せそうだった。お花見をしながら、みんな、幸せそうだった。新しい生活が始まる/№312 2020/03/20 19:20

全ての人は可視化された糸で繋がっていた。親友なら緑の糸。腐れ縁なら青い糸。必ず誰かしらと繋がって、必ず色に何らかの意味がある。そんな中、私の指が運命の赤い糸で結ばれた。その糸の先を辿るとそこはお墓だった。顔も知らない誰かに祈る。祈った。さよなら、私の大切になれなかった人/№313 赤い糸

「今日は不思議な行事を紹介します」とレポーターが伝えると、画面はとある学校に切り替わる。先生が「雨天決行です」と報告するや否や、生徒達は飛んだり跳ねたり喉を鳴らしたりの大騒ぎ。雨の中みんなで歩いて池までたどり着く。なかよく横一列に並ぶと、かえる達はゲコゲコと合唱を始めた/№314 雨の行事

自殺配信をすることにした。私にはこれしか道が残されていないけど、きっと誰かが止めてくれるという気待ちもあった。コメントが流れる。「不幸を見世物にするな」誰かが。「不謹慎だと思わないのか」誰かが、誰かが。「死をエンタメにするな」誰かが。誰かが。誰かが。『配信が終了しました』/№315 404 not found

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