ツイノベ 286-290

記事
小説
今年の福袋が売られていた。「言い値」と書かれたそれを試しに1円で買ってみると、倍の2円になっていた。これは倍になる福袋なのか。僕は何度も通い詰めて、貯金全額を叩いて福袋を買うと、中には何も入っていなかった。「詐欺じゃないか」と怒鳴ると、店員は「お客さん、もう年明けですよ」/№286 福袋

人生格付けチェックが開催された。進学、就職、人間関係と、私達は成長するごとに、AかBの人生を強制的に選ばないといけない。ひとつずつ選択肢を間違えるたびに、一流人生、二流人生と転落していく。そうして私は何度道を間違えたことか。高らかに結果を告げる声がする「生きる価値なし!」/№287 人生格付けチェック

人を殺せるという噂がある黒いノートを手に入れた。奴の苦しむ姿をこの目で見てやろうと、目の前でノートに名前を書き込む。「や、やめるんですの!」「こんなときにふざけてる場合か?」「まだ死にたくないですの!」奴の語尾を不思議に思い、表紙を確認すると『ですのート』と書かれていた/№288 ですのート

今日は高校最後のバレンタインデーだ。彼のために手作りチョコを用意して学校に行く。3年間打ち明けられなかった想いを伝えたくてドキドキした。授業が終わってから彼の元へと向かう。震えながら「ずっとずっと大好きでした」と呟いて、チョコレートを供える。お墓の前で、私は手を合わせた/№289 溶けない

明日で僕は誕生日を迎える。世界では今、二十歳になると強制的に夢をダウンロードされる時代だ。身の丈に合わない夢を見ないように。夢に破れて自殺しないように。機械がいくつかの要素から『正しい夢』を弾き出す。辞めた筈のピアノなのに、机を弾く癖が抜けない。「計算結果、あなたの夢は」/№290 エイミー

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