CM出演契約と不祥事の際の違約金条項 ―「イメージ」を契約するという特殊性―

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コラム
企業がタレントや著名人を起用してCMを制作する場合、単に「映像に出演してもらう」というだけではありません。

企業は、その人物が持つ知名度、信頼感、好感度といった社会的イメージそのものを利用しています。

例えば、

誠実な俳優を起用して企業の安心感を伝える
人気アスリートを起用して挑戦する姿勢を表現する
清潔感のあるタレントで商品のブランド価値を高める

といったように、CM契約ではタレント本人の「信用」が重要な契約対象になります。

そのため問題となるのが、出演者が不祥事を起こした場合です。

不祥事によって企業が受ける損害

CM出演者が契約期間中に重大な問題を起こした場合、企業側には大きな影響があります。

例えば、

CM放送の停止
広告素材の差し替え
商品パッケージの変更
キャンペーンの中止
ブランドイメージ低下
苦情対応

などです。

テレビCMの場合、撮影費、広告枠、制作費など多額の費用が発生しているため、途中で使用できなくなる影響は非常に大きくなります。

そこで契約書では、いわゆる不祥事条項(モラル条項)や違約金条項を設けることがあります。

モラル条項とは?

典型的には以下のような条項です。

出演者は、法令違反、犯罪行為、社会的信用を著しく損なう行為その他広告主の信用・名誉を毀損する行為をしてはならない。

このような義務を定めておくことで、不祥事が発生した場合に契約解除や損害賠償請求につなげる根拠になります。

違約金条項の役割

さらに企業側としては、次のような条項を置くことがあります。

出演者が前条に違反した場合、出演者は広告主に対し、違約金として金〇〇円を支払うものとする。

なぜ事前に金額を決めるのでしょうか。

理由は「損害額の証明が難しい」からです。

例えば、

「不祥事によってブランド価値がどれだけ落ちたか」

を金額で証明することは容易ではありません。

売上減少があったとしても、それが本当に出演者の問題によるものなのか、景気や競合商品の影響なのか判断が難しい場合があります。

そこで契約段階で一定額を定めておくことで、紛争を防止する意味があります。

違約金はいくらでも認められるのか?

もっとも、

「不祥事を起こしたら100億円支払う」

というような条項を書けば必ず有効になるわけではありません。

違約金については、実質的には損害賠償額の予定として扱われることが多く、あまりに過大な金額の場合には、公序良俗違反などを理由に制限される可能性があります。

また、

出演料の金額
CM規模
契約期間
想定される損害
タレント側の責任の程度

などを踏まえた合理的な設定が重要です。

「不祥事」の定義も重要

実務上難しいのは、何を不祥事とするかです。

犯罪行為であれば比較的判断しやすいですが、

SNSでの問題発言
私生活上のトラブル
週刊誌報道
イメージ低下につながる行為

などは判断が難しい場合があります。

単に「世間を騒がせた場合」とだけ書くと、範囲が曖昧になりトラブルになる可能性があります。

そのため契約書では、

「広告主の商品又は企業イメージを著しく害すると合理的に判断される行為」

など、一定の判断基準を設けることがあります。

まとめ

CM出演契約は、単なる出演業務の契約ではなく、出演者の「信用」や「社会的評価」を利用する契約です。

そのため、不祥事が発生した場合の影響は通常の取引契約より大きくなります。

企業側はブランドを守るために、出演者側は過度な責任を負わないために、

禁止される行為の範囲
契約解除条件
違約金の金額
損害賠償との関係

を事前に明確化しておくことが重要です。

華やかなCMの裏側には、数秒の映像を守るための、細かな契約設計が存在しているのです。

南本町行政書士事務所 特定行政書士 西本
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