ChatGPTをはじめとする生成AIを使っていると、
「思っていた回答と違う」
「なんかズレている」
「さっきと言っていることが違う」
ということがあります。
そこでよく言われるのが、
「プロンプトの入れ方が大切です」
という話です。
確かにその通りです。
ただ、プロンプトという言葉を聞くと、何かAIを自由自在に操る「特殊な呪文」のように感じるかもしれません。
実際には、そこまで難しく考える必要はありません。
大切なのは、
AIが判断するために必要な情報を、きちんと渡してあげること
です。
「契約書を作って」だけではAIも困る
例えば、
「業務委託契約書を作ってください」
とだけ入力したとします。
もちろん、現在の生成AIであれば、それらしい契約書を作ってくれるでしょう。
しかし、業務委託契約といっても内容は千差万別です。
コンサルティングなのか。
システム開発なのか。
SNS運用なのか。
デザイン制作なのか。
営業代行なのか。
準委任なのか、請負なのか。
報酬は月額なのか、成果報酬なのか。
再委託を認めるのか。
成果物の著作権は誰に帰属させるのか。
途中で契約を終了できるのか。
こうした情報が何もない状態で「契約書を作って」と言われても、AIは一般的な内容を推測して作るしかありません。
これは人間でも同じです。
行政書士に突然、
「契約書お願いします」
と言って、
「はい、完成しました」
と出てきたら、むしろ少し怖いでしょう。
普通は、
「どのような取引ですか?」
「報酬はいくらですか?」
「どちら側の立場ですか?」
「何か特に禁止したいことはありますか?」
などと確認します。
AIについても同じです。
良いプロンプトとは「長いプロンプト」ではない
ここは少し注意が必要です。
AIのプロンプトについて調べると、ものすごく長いプロンプトが紹介されていることがあります。
「あなたは○○の専門家です」
「以下の条件を厳守してください」
「STEP1では○○、STEP2では○○……」
もちろん、こうした方法が有効な場面もあります。
しかし、
プロンプトは長ければ長いほど優秀、というわけではありません。
重要なのは文字数ではなく、
判断に必要な情報が入っているか
です。
例えば契約書であれば、
・誰と誰が契約するのか
・何をする契約なのか
・料金はいくらなのか
・いつまでの契約なのか
・成果物はあるのか
・特に避けたいリスクは何か
・どちら側を重視して作成するのか
こうした情報の方が重要です。
## AIに「目的」を伝える
もう一つ重要なのが、何のために回答が欲しいのかを伝えることです。
例えば、
「この契約書をチェックしてください」
だけではなく、
「当社が受託者です。受託者側に過度な責任が課されていないかを中心にチェックしてください」
と伝える。
これだけでもAIが見る方向はかなり変わります。
文章作成でも同じです。
「文章を直して」
よりも、
「取引先に送る文章なので、失礼にならない範囲で少し柔らかくしてください」
の方が目的が明確です。
つまり、
「何をしてほしいか」だけではなく、「なぜそれをしてほしいのか」まで伝える。
これがAIを使う上ではかなり重要です。
一発で完成させようとしない
そして個人的に非常に重要だと思っているのがこれです。
AIとのやり取りを一回で終わらせようとしないこと。
生成AIは検索窓とは少し違います。
むしろ、人間と打ち合わせをしている感覚に近いでしょう。
最初に依頼する。
回答を見る。
「ここは違う」
「もっとこうしてほしい」
「この場合はどうなる?」
「この条件も追加してください」
と修正していく。
この繰り返しによって、自分が欲しかったものに近づいていきます。
最初から100点のプロンプトを作ろうとする必要はありません。
むしろ、
AIの回答を見ながら、自分の考えも整理していく。
私はこの使い方の方が生成AIには向いていると思います。
AIに質問させるのも有効
自分でも何を伝えればいいのか分からない場合には、
「この依頼を正確に処理するために、追加で必要な情報があれば先に質問してください」
と入力する方法もあります。
これはかなり便利です。
AI側から、
「契約期間は決まっていますか?」
「報酬の支払時期は?」
「成果物の著作権はどちらに帰属させますか?」
などと聞いてもらう。
つまり、
こちらが完璧なプロンプトを考えるのではなく、AIと一緒にプロンプトを完成させる
という使い方です。
これならAIに慣れていない人でも使いやすいでしょう。
AIへの指示は「新人に仕事をお願いする」感覚に近い
私は生成AIへの指示を考えるとき、
非常に優秀だけれど、こちらの事情を何も知らない新人に仕事をお願いする
くらいの感覚がちょうどいいと思っています。
能力は高い。
知識も豊富。
処理も速い。
しかし、こちらの会社の事情も、取引先との関係も、今回の背景も知りません。
そこで、
「察してください」
ではなく、
「今回はこういう事情があります」
と伝える。
すると回答の精度が上がります。
これは生成AIを使いこなす上で、かなり本質的な部分ではないでしょうか。
プロンプトより大切なもの
そして最後に、少しだけ厳しい話をします。
どれだけプロンプトを工夫しても、
AIの回答が正しいかどうかを判断するのは、最終的には人間です。
これは法律、税務、医療、経営など、専門性の高い分野になればなるほど重要です。
優秀なプロンプトを入れれば、必ず正しい回答が出てくる。
そんな単純なものではありません。
もっともらしく間違えることもあります。
前提条件を勘違いすることもあります。
こちらの意図とは違う方向へ進むこともあります。
だからこそ、
プロンプトを工夫する能力と、出てきた回答を評価する能力はセットです。
生成AIの時代になると「質問する能力が重要になる」と言われます。
私はそれに加えて、
「回答を疑う能力」も同じくらい重要になる
と思っています。
AIに何を聞くか。
どこまで情報を渡すか。
出てきた回答のどこを採用し、どこを捨てるか。
この一連の作業まで含めて、生成AIを使うということなのだと思います。
南本町行政書士事務所 特定行政書士 西本