年契約だけして、3ヶ月放置していた
正直に書くと、ChatGPTを年契約してから、3ヶ月くらいまともに触らなかった。
ニュースで便利だと聞いて、サブスクを押したところまでは早かった。そのあとが続かなかった。アプリを開いて、検索窓みたいな入力欄を見て、「いい感じにまとめて」と打って、出てきた一般論を眺めて、画面を閉じる。それを2回くらい繰り返して、ホーム画面からアイコンを少しずらした。
「自分の仕事には合わない」と思っていた。
部下店長との面談、月末の本部報告、月曜の朝礼。どれも現場の事情が複雑で、AIが知らない前提が多すぎるから、汎用的な答えしか返ってこない、と感じていた。半分は当たっていて、半分は外れていた。
外れていたのは、AIの能力の話ではなく、自分が何も渡していなかったほうの話だった。3ヶ月触らなかった僕が、その差に気づくのに、もう少し時間がかかった。
月曜の朝、自分の話が短くなった
きっかけは、月曜の朝礼の前置きが、自分でも気づかないうちに短くなっていた日だった。
ふだんは7、8分かけて話していた前段が、3分ちょっとで終わっていた。話題はいつもと同じだった。先週の売上の動き、欠品の振り返り、今週のシフトのこと。何かを省いたわけではない。順番が整っていて、繰り返しが減っていた。
理由はわかっていた。出勤前に、先週分の数字と、現場で取った写真メモと、自分が朝食を食べながら走り書きした下書き音声を、全部AIに突っ込んでいたからだ。3行の下書きを作る作業ではなく、自分の頭の中身を一度全部AIの席に置く作業をしていた。
AIから返ってくる構成は、毎回そのまま読み上げるわけではない。半分以上は店の実情と合わない。それでも、自分が話す順番のたたき台として、頭の中の散らかりを一度床に並べてくれる相手がいる。それだけで朝の入りが変わる。
たたき台があると、削るほうの作業に切り替わる。0から組み立てるより、削るほうがはるかに早い。
1on1は、もう録音している
部下店長と週次で持っている面談を、半年前から全部録音している。
スマホを机に置いて、最初に「録ります」と一言だけ伝える。30分から1時間、まるごと録る。終わったあとに文字起こしして、その日のうちにAIへ流す。直近3回分の面談ログと、自分が補足したいメモも一緒に投げる。
そこから出してもらうのは、本人の言葉の変化と、自分の問いの偏りだ。前々回は「やります」と即答していた話題に、今回は条件をつけて答えている。前回までは出てこなかった単語が、今回3回出てきている。自分の側は、3回連続で同じ問い方をしている。そういう類のことが、文字に起きると見える。
頭の中だけで反芻していた頃は、こういう変化に2回くらい乗り遅れていた。AIが拾ってくれるおかげではない。AIに渡すために録音と文字起こしを習慣にしたことが、効いている。素材を残す覚悟ができたあとで、AIはようやく使えるようになった。
来週の面談の頭で、「3週前のあの言い回し、今もそのままですか」と切り出せる確率が、明確に上がった。
報告書は、生データを全部投げてから組む
月末に毎回詰まる種類の報告書がある。
書く内容が決まっているわけではない。先月の動きを束ねて、本部に渡る形にする。慣れているはずの作業なのに、毎月、最後の3日くらいまで手をつけられないでいた。重さの理由は、書くことそのものではなく、何から書くかを決める手前の整理だった。
いまは、月初に1時間だけ確保して、先月分の数値ダンプと、店舗ごとに自分が現場で残したメモと、本部から来ていたメールの抜粋を、まとめてAIに渡す。「この素材から、本部向けに違和感が出るところを5つ抜いて、月の動きとして物語にして」と一行入れる。
返ってきたたたきは、半分くらいは事実誤認を含む。AIには現場の温度はわからないので、それは当然だ。ただ、自分が見落としていた数字の動きを2つくらい拾ってくれることがある。月末の3日で組んでいたときは、その2つを毎回落としていた気がする。
たたきを直すだけの作業に切り替わると、月末の感じが変わる。
もう8分には戻れない
近いうちに次の店に異動するかもしれない、という話が現場で出ている。
新しい店で、また朝礼に8分かけるかと言われると、たぶんかけない。AIに自分の素材を全部渡すという習慣を覚えたあとは、戻し方を忘れる。それが楽になっただけなのか、自分の判断が雑になっているだけなのかは、まだ自分でも見分けがついていない。
ただ、走れる人にはちゃんと走り方を渡したい、という気持ちは前より強くなった。AIを部下店長に渡したいわけではなく、「自分の頭の中身を一度全部床に並べてもらう習慣」を渡したい。そのほうが先だと思っている。
その手順は、最近少しずつ別のレーンにまとめている。20個ほどになった。録音をどう取るか、何と一緒にAIへ渡すか、どこから削るか。朝礼で2分縮んだ理由も、1on1のログ運用も、月末の組み立て直しも、そっちに置いた。
「いい感じにまとめて」と打って画面を閉じていた3ヶ月前の自分には、たぶん渡しても響かなかった。素材を全部投げる側に立ったいまだから、ようやく形にできた手順だと思う。
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