家にいるのに、落ち着かないあなたへ
自分の家なのに、どこにいても落ち着かない。リビングにいれば話しかけられるし、部屋にこもれば、こもっていることを気にされる。廊下の足音が近づいてくるだけで、少し身構えてしまう。そんな夜を過ごしている人は、思っているより多いです。やっかいなのは、これを人に言いにくいことだと思っています。虐待されているわけでもない。ひどいことを言われたわけでもない。ごはんも出てくるし、心配もされている。それなのに、しんどい。言葉にすると、わがままに聞こえてしまいそうで、飲み込んでしまう。私にも、その時期がありました。育った家に子ども部屋はなくて、勉強も食事も家族と同じ部屋でした。小学生のうちは、それが当たり前だと思っていました。変わったのは中学に上がった頃です。母と同じ部屋にいるのが、急に嫌になりました。用事を作っては席を立って、話しかけられても生返事だけ返す。自分でも、なんでこんなに冷たくなるのだろうと思っていました。母を嫌っていたわけではありません。それが自分でも分かっていたから、なおさら苦しかった。優しくできない自分のほうが、どこかおかしいのだと思っていました。その答えが分かったのは、ずいぶん後になってからです。人には、近づかれると落ち着かなくなる距離があります。幼い頃はその距離が狭くて、親とぴったりくっついていても平気です。ところが成長すると、その距離は広がっていきます。広がるのは自然なことで、止められません。つまり、あの頃の私に足りなかったのは優しさではなく、距離でした。あの家には、ひとりになれる場所がひとつもなかった。それだけのことだったのです。心が冷たかったのではなく、家が追いついてい
0