『ふらのは鍵っ子でした』
いつもカバンの中には、紐付きの鍵が入っていました。本当は可愛いキーホルダーをつけたかったけれど、鍵っ子だとわかると危ないから。「絶対なくさないように」そう言われた日のことを、今でも覚えています。家に帰ると、まず自分で鍵を開けて家に入ります。同級生はそれを、「かっこいい」とか「うらやましい」って言っていました。でも、実際はそんなにいいものじゃありません。ただ、寂しかった。そのあと、引っ越しをしました。新しい学校。新しい教室。今度は、そこでいじめられました。学校に行くのが嫌でした。でも、学校が終われば家に帰らなくちゃいけない。やっと一日が終わったと思って帰っても、待っている人はいません。学校も嫌。家に帰っても、ひとりぼっち。どこに行っても、自分の居場所がないような気がしていました。あの頃の私は、どこに帰ればよかったんだろう。大人になった今、その家にはもう違う人が住んでいます。私が鍵を開けて帰っていた家は、もう私の家ではありません。だから、ふらのには帰る家がありません。たぶん私はずっと、「おかえり」って言ってもらえる場所を探していたんだと思います。そして今度は、誰かに「おかえり」って言える場所を作りたい。「ただいま」って帰ってきた人に、「おかえり」って言ってあげられる場所を。昔のふらのが、ずっと欲しかった言葉だから。もし今日、誰かと少し話したいなって思ったら。たわいもない話でも、ちょっと寂しいって話でも大丈夫。ふらのが「おかえり」って迎えます。
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