絞り込み条件を変更する
検索条件を絞り込む

すべてのカテゴリ

1 件中 1 - 1 件表示
カバー画像

夜に読む、恋の記憶 第5話

彼から連絡が来たのは、夜の九時を少し過ぎた頃でした。「ちょっと話せる?」その一言だけで、私はすぐに返事をしてしまいました。「大丈夫だよ」本当は、少し期待していました。何か大事な話かな。もしかして、私に会いたいのかな。そんなことを、勝手に思ってしまったんです。電話が鳴って、彼の声が聞こえました。少しだけ迷っているような、いつもより弱い声でした。「相談があるんだけど」その言葉に、胸の奥がきゅっとしました。でも次の瞬間、彼は別の人の名前を出しました。「気になってる子がいてさ」一瞬、何も言えませんでした。でも私は、いつものように笑った声を作りました。「そうなんだ」うまく言えたと思います。苦しくないふりも、ちゃんとできていたと思います。彼は、その子の話をしました。どんなLINEを送ればいいか。どこに誘えばいいか。脈があると思うか。私はひとつひとつ、ちゃんと答えました。「それなら、素直に誘ってみたら?」「きっと嬉しいと思うよ」「気持ち伝えてみなよ」本当は、その気持ちを私に向けてほしかった。でもそんなこと、言えるはずがありませんでした。電話の向こうで、彼は少し安心したように笑いました。「話してよかった」その言葉が、嬉しくて、悲しかった。彼の役に立てたことは嬉しかった。でも私は、好きな人の恋を応援する役になってしまったんだと思いました。電話を切ったあと、部屋が急に静かになりました。スマホの画面には、通話時間だけが残っていました。長く話せた。声も聞けた。それなのに、少しも満たされませんでした。友達としては、きっと近くにいられたのだと思います。でも、好きな人としては、ずっと遠かった。その夜、私は布
0
1 件中 1 - 1