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ちび愚者、はじまりの一歩

夜と朝の間の曖昧な、世界の一日が始まろうとしている時間。
ちび愚者は、小さな白い花を一輪持って、ぽつんと立っていました。足もとに道らしい道はありません。
けれど遠くのほうで光る何かが、ちび愚者を呼んでいるような気がしました。
「どこへ行くの?」後ろから小さな犬が、首をかしげます。ちび愚者は、少し考えてから言いました。「わからない。でも、行ってみる」その声は少し頼りなくて、でも不思議と明るい声でした。ポケットの中には何もなく、地図もありません。
これからどんな人たちと出会うのか、まだ何も知りません。でも、ちび愚者は思いました。『ちゃんと決めてから歩き出す日もあるけれど、
わからないまま、一歩だけ踏み出す日もあるんだ』怖くないわけではありません。
迷わないわけでもありません。それでも、胸の奥にある小さな光が、
「こっちだよ」と呼んでいる気がしたのです。ちび愚者は、白い花をぎゅっと持ち直しました。「まずは、あの光のところまで」そう言って、一歩を踏み出しました。その先に、魔術師が待っているとも知らずに。愚者のカードは、まだ何も始まっていないようでいて、実はもう始まっているカードです。
準備が完璧でなくても、心が少しだけ動いたなら、それが最初の一歩になることがあります。
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