「『なぜ』と『どのように』のあいだ」東京学芸大学多文化共生コース2022年
(1)問題① その占い師は,私が暮らしていた村の隣村に住んでいた。「アファ」と呼ばれる卜占(ぼくせん)を行うクワシ氏はトーゴ出身のエウェ民族で,ふだんは農民として生計を立てている。温和な彼のところには,さまざまな悩みを抱えた人たちがやってきた。親族とのいさかい,恋愛関係のもつれ,仕事の悩み,それに病気。依頼者がやってくると,クワシ氏は自宅のヴェランダにゴザを敷いて座り,木の実の殻をつないで作った札を投げる。この札の表裏の出方をみながら占いを進めていくのだが,八つの札の出方のパターンは全部で二五六通りもあり,それぞれの型に名前と物語がついている。② クワシ氏は,最初に出た札の型が示す寓話的な物語を語りだす。依頼者とのやりとりを通して入り組んだ問題に筋道をつけ,占いによって問題の原因を見極めていく。災難を引き起こすものとしてしばしば見いだされるのは,身近な他者による邪術(注1)だ。原因が推定されると,今度は問題を取り除くための儀礼が行われる。依頼者はアファの杜(もり)で供犠を捧げ。霊薬を呑み,さまざまな禁忌に従わなくてはならない。③ 人生にふりかかってくる災厄に対して,人びとはどのような解釈を施し,いかに対処しているのか。これは古くからの人類学的テーマのひとつだ。一九二〇年代後半にスーダンのアザンデ社会で調査を行ったエヴァンズ・プリチャードは,妖術(注2)が不運な出来事に対する独特の説明原理となっていることを見いだした。たとえば,私が穀物小屋の陰で休んでいたときに小屋が倒れ,その下敷きになって怪我をしたとする。小屋が倒壊したのはシロアリに喰われて支柱が弱っていたからだ。
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