好きってさ、意外と自分でも分からないことあるじゃん。
「陽菜って……悠真のこと好きなんだよね?」言ってしまった。聞くつもりなんてなかったのに。でも気づいたら、口からこぼれていた。夕暮れの帰り道。雨上がりのアスファルトがまだ少しだけ濡れている。陽菜は歩く足を止めなかった。ただ少しだけ目を丸くした。「え?」凪は慌てて視線を逸らした。「いや、その……今日みんなが聞いてたから」苦しい言い訳だった。自分でも分かる。本当は気になったからだ。どうしてこんなに気になるのかは分からないけれど。陽菜はしばらく黙っていた。二人の足音だけが続く。その沈黙がやけに長く感じた。やがて陽菜が小さく笑った。「どうだろうね」昼休みと同じ答えだった。凪の胸がざわつく。「またそれ」「だって難しいもん」陽菜は空を見上げた。薄い茜色が広がっている。「好きってさ」そこで言葉を切る。「意外と自分でも分からないことあるじゃん」凪は何も言えなかった。その言葉が妙に胸に刺さった。自分自身のことを言われた気がしたからだ。陽菜は続ける。「前は好きだと思ってたのに違ったとか」「逆に、全然気づいてなかったとか」風が吹く。陽菜の髪がふわりと揺れた。凪の心も一緒に揺れた気がした。「だから今は、まだ分かんないかな」そう言って陽菜は笑う。優しい笑顔だった。なのに。なぜか安心できなかった。むしろ胸の奥が少しだけ苦しい。陽菜が誰を見ているのか。まだ分からない。だけど、知らなくてもいいと思っていたはずなのに・・・。今は知りたかった。
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