絞り込み条件を変更する
検索条件を絞り込む

すべてのカテゴリ

2 件中 1 - 2 件表示
カバー画像

文化祭の中で生まれた恋 第1話「準備室で、目が合ってしまった日」

文化祭の準備が始まった日だった。教室の空気は、いつもより少しだけ騒がしくて、黒板には雑な字で「文化祭準備」と書かれていた。段ボール、ガムテープ、色紙、ペン。机の上には、まだ形になっていない“文化祭のかけら”が散らばっている。「じゃあ、この班で準備進めていきます」担任の声が響く。その瞬間だった。(最悪だ)同じ班に、あの人がいた。特別仲がいいわけでもない。でも、なぜか目が合うと少しだけ気まずくなる。そんな距離の人。席が決まり、机が並び替えられる。気づけば、隣の席。(近いって)ほんの数十センチの距離なのに、やけに意識してしまう。「じゃあ、装飾担当はこれで分けて」誰かがそう言って、作業が始まった。ガサッ段ボールを開ける音。ペンを試し書きする音。笑い声。でも、自分の中だけ少し違う音がしていた。(なんでこんなに気になるんだろ)隣にいるだけなのに。ただそれだけなのに。ふと、横を見る。その瞬間。目が合った。「……」一秒。いや、それ以上だったかもしれない。先に逸らしたのは、自分だった。(やばい)心臓が少しだけ速くなる。「ここ、どうやる?」隣から声がした。普通の声。普通の言葉。なのに。なぜか、落ち着かない。「あ、うん、それは…」うまく言えない。さっきの“目が合った時間”が、まだ残っている。気づいているのか、いないのか。相手は普通に作業を続けている。(自分だけだ、これ)そう思った瞬間、少しだけ恥ずかしくなった。文化祭の準備は進んでいく。でも自分の中だけ、何かが止まったままだった。この日をきっかけに、まだ名前のない感情が動き始める。それが“恋”だと気づくのは、もう少し先の話だった。続く(第2話へ)
0
カバー画像

文化祭の中で生まれた恋 第1話「準備室で、目が合ってしまった日」

文化祭の準備が始まった日だった。教室の空気は、いつもより少しだけ騒がしくて、黒板には雑な字で「文化祭準備」と書かれていた。段ボール、ガムテープ、色紙、ペン。机の上には、まだ形になっていない“文化祭のかけら”が散らばっている。「じゃあ、この班で準備進めていきます」担任の声が響く。その瞬間だった。(最悪だ)同じ班に、あの人がいた。特別仲がいいわけでもない。でも、なぜか目が合うと少しだけ気まずくなる。そんな距離の人。席が決まり、机が並び替えられる。気づけば、隣の席。(近いって)ほんの数十センチの距離なのに、やけに意識してしまう。「じゃあ、装飾担当はこれで分けて」誰かがそう言って、作業が始まった。ガサッ段ボールを開ける音。ペンを試し書きする音。笑い声。でも、自分の中だけ少し違う音がしていた。(なんでこんなに気になるんだろ)隣にいるだけなのに。ただそれだけなのに。ふと、横を見る。その瞬間。目が合った。「……」一秒。いや、それ以上だったかもしれない。先に逸らしたのは、自分だった。(やばい)心臓が少しだけ速くなる。「ここ、どうやる?」隣から声がした。普通の声。普通の言葉。なのに。なぜか、落ち着かない。「あ、うん、それは…」うまく言えない。さっきの“目が合った時間”が、まだ残っている。気づいているのか、いないのか。相手は普通に作業を続けている。(自分だけだ、これ)そう思った瞬間、少しだけ恥ずかしくなった。文化祭の準備は進んでいく。でも自分の中だけ、何かが止まったままだった。この日をきっかけに、まだ名前のない感情が動き始める。それが“恋”だと気づくのは、もう少し先の話だった。続く(第2話へ)
0
2 件中 1 - 2