文化祭の中で生まれた恋 第1話「準備室で、目が合ってしまった日」

文化祭の中で生まれた恋 第1話「準備室で、目が合ってしまった日」

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占い
文化祭の準備が始まった日だった。

教室の空気は、いつもより少しだけ騒がしくて、
黒板には雑な字で「文化祭準備」と書かれていた。

段ボール、ガムテープ、色紙、ペン。

机の上には、まだ形になっていない“文化祭のかけら”が散らばっている。

「じゃあ、この班で準備進めていきます」

担任の声が響く。

その瞬間だった。

(最悪だ)

同じ班に、あの人がいた。

特別仲がいいわけでもない。
でも、なぜか目が合うと少しだけ気まずくなる。

そんな距離の人。

席が決まり、机が並び替えられる。

気づけば、隣の席。

(近いって)

ほんの数十センチの距離なのに、
やけに意識してしまう。

「じゃあ、装飾担当はこれで分けて」

誰かがそう言って、作業が始まった。

ガサッ

段ボールを開ける音。

ペンを試し書きする音。

笑い声。

でも、自分の中だけ少し違う音がしていた。

(なんでこんなに気になるんだろ)

隣にいるだけなのに。

ただそれだけなのに。

ふと、横を見る。

その瞬間。

目が合った。

「……」

一秒。

いや、それ以上だったかもしれない。

先に逸らしたのは、自分だった。

(やばい)

心臓が少しだけ速くなる。

「ここ、どうやる?」

隣から声がした。

普通の声。

普通の言葉。

なのに。

なぜか、落ち着かない。

「あ、うん、それは…」

うまく言えない。

さっきの“目が合った時間”が、まだ残っている。

気づいているのか、いないのか。

相手は普通に作業を続けている。

(自分だけだ、これ)

そう思った瞬間、少しだけ恥ずかしくなった。

文化祭の準備は進んでいく。

でも自分の中だけ、何かが止まったままだった。

この日をきっかけに、
まだ名前のない感情が動き始める。

それが“恋”だと気づくのは、もう少し先の話だった。

続く(第2話へ)
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