心が通わない関係が、私を守ってくれていた
心が通わなかった上司がいました。
言葉はいつも短くて、
必要なことだけが、淡々と交わされる関係。
そこに、
感情が入り込む余地は
ほとんどありませんでした。
正直に言うと、
あまり得意なタイプではなかったけれど、
今振り返ると、
あの距離感には、
意味があったように思います。
切羽詰まった部署で、
人と人との間に立ち続けていた上司。
その背中を、
少し離れた場所から見ていました。
私もまた、その距離の中で、関わり方を選んでいたのだと思います。私はこの仕事を、生活のために続けていました。
だから、深く入らない。
期待しない。
感情を差し出さない。
そんなふうに、自分の立ち位置を、自然とそう決めていたのだと思います。そのときは、気づいていなかったけれど、心が通わなかったことは、
欠けていたものではなく、
最初から与えられていた、
ひとつの「距離」でした。
その距離があったから、
私は消耗せずに、
ここにいられたのだと思います。
退職の日。
最後に交わした言葉の中で、
はじめて、
あたたかなものに触れました。
上司の瞳が、かすかに潤んでいて、その奥にあったものが、まっすぐ伝わってきました。それはきっと、
ずっとそこにあったけれど、
見えない形で保たれていたもの。
心が通う、ということは、いつも表に現れるものではないのかもしれません。言葉にならないまま、
距離の中で保たれていたものも、
たしかに、そこにあったのだと思います。今までの私は、心が近い関係の中で働くことが多くて、それが当たり前だと思っていました。でも、すべての場所でそうである必要はない。心が通わない関係にも、ちゃんと意味があ
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