絞り込み条件を変更する
検索条件を絞り込む

すべてのカテゴリ

4 件中 1 - 4 件表示
カバー画像

第9話 「好きって伝わったのに、不安は消えない」

朝。目が覚めた瞬間、昨日のことを思い出した。『…好きだよ』電話越しに言った言葉。何度思い返しても、心臓が熱くなる。(マジで言ったんだよな…)恥ずかしさと、信じられない気持ち。でも。それ以上に。嬉しかった。澪も、自分を好きだった。それだけで世界が変わったみたいで。昨日まで苦しかったものが、全部少し軽く見える。なのに。(…なんでこんな不安なんだよ)胸の奥が、妙に落ち着かない。好きって伝わった。想いも繋がった。普通なら、それで安心するはずなのに。むしろ今の方が怖い。(嫌われたらどうしよう)頭の中に浮かぶ。付き合ってない。ちゃんと始まったわけでもない。昨日は勢いだったのかもしれない。時間が経ったら、冷静になるかもしれない。(…考えすぎだろ)自分で分かってる。でも、止まらない。教室に入る。澪がいる。目が合う。その瞬間。昨日までとは違う空気が流れた。澪が少しだけ目を逸らす。頬、赤い。(やば)一気に心臓が跳ねる。でも。昨日みたいに話しかけてこない。距離も、そのまま。(…あれ?)胸がざわつく。昼休み。澪は友達と話していた。普通に笑ってる。でも。こっちを見ない。(なんで)昨日あんなこと言ったのに。頭の中が、一気に不安で埋まる。(やっぱり勢いだった?)(後悔してる?)考えなくていいことばかり浮かぶ。気づけば、視線で追っていた。そのとき。澪が立ち上がる。そして。真っ直ぐ、こっちに来た。(え)心臓が止まりそうになる。「…ちょっと」小さい声。近い。昨日より、ずっと近く感じる。「…なに」声が掠れる。澪は少しだけ目を逸らした。そして。「…今日、全然こっち見ない」え。思考が止まる。「いや、見てたけど」反射で答
0
カバー画像

第9話 「好きって伝わったのに、不安は消えない」

朝。目が覚めた瞬間、昨日のことを思い出した。『…好きだよ』電話越しに言った言葉。何度思い返しても、心臓が熱くなる。(マジで言ったんだよな…)恥ずかしさと、信じられない気持ち。でも。それ以上に。嬉しかった。澪も、自分を好きだった。それだけで世界が変わったみたいで。昨日まで苦しかったものが、全部少し軽く見える。なのに。(…なんでこんな不安なんだよ)胸の奥が、妙に落ち着かない。好きって伝わった。想いも繋がった。普通なら、それで安心するはずなのに。むしろ今の方が怖い。(嫌われたらどうしよう)頭の中に浮かぶ。付き合ってない。ちゃんと始まったわけでもない。昨日は勢いだったのかもしれない。時間が経ったら、冷静になるかもしれない。(…考えすぎだろ)自分で分かってる。でも、止まらない。教室に入る。澪がいる。目が合う。その瞬間。昨日までとは違う空気が流れた。澪が少しだけ目を逸らす。頬、赤い。(やば)一気に心臓が跳ねる。でも。昨日みたいに話しかけてこない。距離も、そのまま。(…あれ?)胸がざわつく。昼休み。澪は友達と話していた。普通に笑ってる。でも。こっちを見ない。(なんで)昨日あんなこと言ったのに。頭の中が、一気に不安で埋まる。(やっぱり勢いだった?)(後悔してる?)考えなくていいことばかり浮かぶ。気づけば、視線で追っていた。そのとき。澪が立ち上がる。そして。真っ直ぐ、こっちに来た。(え)心臓が止まりそうになる。「…ちょっと」小さい声。近い。昨日より、ずっと近く感じる。「…なに」声が掠れる。澪は少しだけ目を逸らした。そして。「…今日、全然こっち見ない」え。思考が止まる。「いや、見てたけど」反射で答
0
カバー画像

第9話:壊したくないのに、もう戻れない

会議室を出たあとも、涙はしばらく止まらなかった。(……なんであんなこと言ったんだろう)頭では分かっている。距離を取るのは、正しかった。でも。(……もう、隠せない)あの瞬間。言葉にはしていないのに、全部伝わってしまった気がした。オフィスに戻ると、いつも通りの空気が流れていた。キーボードの音。電話の声。人の気配。その中にいるのに、自分だけが、少し浮いている。(……戻れない)前みたいに、何もなかった顔で話すことができない。でも。「澪さん」呼ばれて、心臓が跳ねる。振り返る。蒼さんだった。「この件ですが」いつも通りの声。いつも通りの距離。でも。(……違う)空気が、確実に変わっている。「はい」私は、できるだけ平静に返した。資料を見ながら話す。視線は、画面に向けたまま。でも。分かる。見られている。前とは違う意味で。「…ここ、もう少し詰められますか」指摘は、いつも通り。「はい、やってみます」声も、いつも通り。でも。沈黙が、長い。その沈黙が、妙に息苦しい。「……」ふと、顔を上げる。視線が、ぶつかる。一瞬で、逸らした。(……無理)もう、普通には戻れない。その日の夜。仕事を終えて、外に出ると、雨が降っていた。(……最悪)傘を持っていない。少し迷って、そのまま歩き出した。濡れてもいいと思った。頭の中を、全部流してしまいたかった。「澪さん」背後から、声。振り返る。蒼さんだった。「……傘、使ってください」差し出された傘。「…大丈夫です」反射的に断る。「風邪ひきますよ」変わらないトーン。でも。(……優しい)それが、逆に苦しい。「…いいです、本当に」距離を取らなきゃいけないのに。こんなことされたら、(……無理
0
カバー画像

第9話:壊したくないのに、もう戻れない

会議室を出たあとも、涙はしばらく止まらなかった。(……なんであんなこと言ったんだろう)頭では分かっている。距離を取るのは、正しかった。でも。(……もう、隠せない)あの瞬間。言葉にはしていないのに、全部伝わってしまった気がした。オフィスに戻ると、いつも通りの空気が流れていた。キーボードの音。電話の声。人の気配。その中にいるのに、自分だけが、少し浮いている。(……戻れない)前みたいに、何もなかった顔で話すことができない。でも。「澪さん」呼ばれて、心臓が跳ねる。振り返る。蒼さんだった。「この件ですが」いつも通りの声。いつも通りの距離。でも。(……違う)空気が、確実に変わっている。「はい」私は、できるだけ平静に返した。資料を見ながら話す。視線は、画面に向けたまま。でも。分かる。見られている。前とは違う意味で。「…ここ、もう少し詰められますか」指摘は、いつも通り。「はい、やってみます」声も、いつも通り。でも。沈黙が、長い。その沈黙が、妙に息苦しい。「……」ふと、顔を上げる。視線が、ぶつかる。一瞬で、逸らした。(……無理)もう、普通には戻れない。その日の夜。仕事を終えて、外に出ると、雨が降っていた。(……最悪)傘を持っていない。少し迷って、そのまま歩き出した。濡れてもいいと思った。頭の中を、全部流してしまいたかった。「澪さん」背後から、声。振り返る。蒼さんだった。「……傘、使ってください」差し出された傘。「…大丈夫です」反射的に断る。「風邪ひきますよ」変わらないトーン。でも。(……優しい)それが、逆に苦しい。「…いいです、本当に」距離を取らなきゃいけないのに。こんなことされたら、(……無理
0
4 件中 1 - 4