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……凪といる時間、当たり前みたいになってた。

月曜の帰り道。曇り空の下、二人の足音だけが並んでいる。少し近い。昨日より、半歩だけ。でも、触れない。凪は、自分の手をぎゅっと握った。触れたいわけじゃない。……少しだけ、触れたい。でも、いま触れたら、何かが変わってしまいそうで。「凪さ。」悠真が、前を向いたまま言う。「この前さ、寂しかったって言っただろ。」心臓が跳ねる。凪は、うなずく。「俺、ちゃんと考えた。」その言葉が、静かに落ちる。曇り空の下なのに、胸の奥だけ、少し明るくなる。「俺はさ……」そこで、言葉が止まる。風が吹く。赤いリボンが揺れる。「……凪といる時間、当たり前みたいになってた。」凪は、息を止める。「当たり前じゃないのに。」その一言が、やさしく、でも確かに響く。触れない。でも、距離が近い。沈黙が、さっきより温かい。「俺、ちゃんと向き合うから。」何に、とは言わない。でも、わかる。凪の胸が、じわっと熱くなる。まだ、約束じゃない。まだ、確信じゃない。でも。期待が、芽を出す。「じゃあ、また明日。」その「明日」が、前より少しだけ、楽しみになる。悠真が振り返る。ほんの一瞬だけ、目が合う。その視線に、“選ばれたい”という願いが、滲む。凪は、小さく笑う。不安は消えていない。陽菜の存在も、消えていない。それでも。この恋は、まだ終わらない。むしろ——ここからかもしれない。
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……ちょっとだけ、寂しかった。

月曜の朝。教室のざわめきが、少しだけ遠く聞こえる。凪は、自分の席に座ったまま、悠真の姿を視界の端で探していた。いる。いつもと同じ場所。いつもと同じ横顔。それだけで、少しだけ胸が温かくなる。(やっぱり、好きなんだ)苦しいのに。不安なのに。それでも、好きは消えない。休み時間。悠真が、凪の机の前に立った。「おはよ。」短い声。でも、目がまっすぐだった。凪の心臓が、ひとつ跳ねる。「……おはよ。」一瞬だけ、視線が絡む。その瞬間、昨日までの距離が、少しだけ縮む。悠真が、ぽつりとつぶやく。「昨日、なんか変だったよ。」凪は、息を止める。言葉にするのは、怖い。でも。逃げ続けたら、本当に遠くなってしまう気がして。「……ちょっとだけ、寂しかった。」小さな声。ほとんど、風に消えそうな声。でも、悠真には届いた。少し驚いた顔をして、それから、やわらかく笑う。「そっか。」それだけ。言い訳も、否定も、しない。「ごめん。」その一言が、胸に落ちる。凪は、泣きそうになる。泣かないけど。“ちゃんと、届いた”それがうれしい。昼休み。陽菜が、無邪気に笑っている。その声は、相変わらず明るい。でも、今日は少し違う。凪は、逃げなかった。悠真の隣に立つことも、目を合わせることも、やめなかった。好きでいることを、隠さなかった。それだけで、少しだけ、強くなれた気がした。放課後。帰り道。二人の距離は、昨日より近い。触れない。でも、近い。「凪。」「なに?」「俺さ、ちゃんと考える。」何を、とは言わない。でも、わかる。凪は、小さくうなずく。空は、まだ曇っている。でも。その向こうに、薄い光が見えた気がした。甘い。でも、まだ不安。それが、この恋。
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