もう、恋人同士って感じ?
翌朝の教室は、窓からの光がやわらかかった。凪は席に着き、鞄からノートを出す。——いつもと同じ朝。なのに、胸の奥が、少しだけ落ち着かない。「おはよ」悠真の声。「おはよう」短いやりとり。それだけで、心拍が整う。チャイム前のざわめきの中、クラスメイトの男子が、何気なく言った。「なあ」「昨日さ、二人で帰ってたよな」凪は、ほんの一瞬だけ手を止める。「仲いいよね」「もう、恋人同士って感じ?」——その言葉。大きな声じゃない。確認でも、詮索でもない。ただ、机の上にそっと置かれたみたいな言い方だった。凪は、反射的に否定しなかった。悠真も、笑って受け流す。「そう見える?」「うん」「なんか、安心するっていうか」男子は、それだけ言って席に戻る。ざわめきが、元に戻る。——何も、壊れていない。凪は、そっと息を吐く。(……呼ばれた)自分たちが選んだ言葉じゃない。でも、踏みにじられた感じもしない。悠真が、小さく言う。「嫌だった?」凪は、首を振る。「……びっくりはした」「でも」少し考えてから、続ける。「置かれただけ、って感じだった」悠真は、わかる、というようにうなずく。「押しつけられてない」「うん」授業が始まる。黒板の文字を追いながら、凪は思う。——恋人、という言葉は、——もう、遠くない。でも、自分の口で呼ぶまでは、ちゃんと待ちたい。休み時間。凪は、窓の外を見る。雲は、昨日より少し高い。悠真が、隣に来る。「ね」凪が、言う。「いつかさ」「私がその言葉を使ったら」悠真は、遮らない。「そのときは」「ちゃんと、聞いてね」悠真は、少し照れたように笑う。「待つよ」「呼ばれるまで」凪は、胸があたたかくなるのを感じた。——置か
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