第10話 「スマホが開かない...」 ネット銀行という名の“資産蒸発”とデジタル地獄
第9話で描かれた、骨肉の相続争い。 法定相続分を盾にした兄弟との泥沼の戦いは、心身ともにあなたを疲弊させました。 しかし、いざ遺産分割の実務に入ろうとした時、あなたは戦慄します。
親父の遺産、これだけのはずがない...。生前、親はこう言っていました。 「最近は金利がいいから、退職金の大半はネット銀行に移したんだ」あなたは、親の遺品であるスマートフォンを手に取ります。その画面の向こうに、数千万円の資産があるはずです。 しかし、画面には無情にも「パスワードを入力してくださいの文字。
何度試しても、エラー。ロックは開きません。 これが、現代の相続における新たな地獄、「デジタル遺品」の入り口です。
第一の地獄:存在すら証明できない「ステルス資産」
通帳があれば、どこの銀行にいくらあるか一目瞭然です。しかし、ネット銀行には「通帳」がありません。
スマホが開かなければ、アプリも見られない。メールも見られない。 つまり、「どこの銀行に口座があるのか」すら、あなたには分からないのです。
「もしかして、楽天? SBI? それとも...?」 あなたは雲を掴むような思いで、片っ端から金融機関に問い合わせるしかありません。しかし、ネット銀行には「窓口」がありません。電話は繋がりにくく、手続きはすべて郵送。本人確認書類、除籍謄本、印鑑証明...。一つの銀行の残高照会をするだけで、数ヶ月の時間が溶けていきます 。
その間にも、相続税の申告期限(10ヶ月)は刻一刻と迫ってきます。 目の前にスマホがあるのに、その中の資産には指一本触れられない。 まるで資産が蒸発してしまったかのような錯覚
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