日本むかし話より『貧乏神と福の神』
「こんにちは」寺の近くで商売をしている太郎さんの家に、ある日、若い娘さんが訪ねてきました。笑顔が素敵な美人で、いつまでも一緒にいたくなるような女性です。「あなたは、どなたですか?」太郎さんがそう尋ねると、その娘さんは、意外なことを言いました。「私は、家々を訪ねて、福の種をまいている福の神です」太郎さんは、福の神が訪ねてきたのだと知ると、すっかり舞い上がってしまいました。「それは、それは。どうそ、どうぞ奥へお入り下さい」と言って大歓迎し、家の一番奥の、上の間に通して、その女性の前にご馳走を並べたのです。 それからしばらくすると、太郎さんのところへ、また別の女性が訪ねてきたのです。その女性は大変みすぼらしい格好をしており、太郎さんの好みの女性ではありませんでした。「あなたは、どなたですか?」太郎さんがそう訊くと、「私は貧乏神です。しばらくこの家において下さい」と言うのです。美しい福の神の登場で、すっかり良い気持ちになって満足をしていた太郎さんですが、今度は迷惑な客が現れたものだと腹を立ててしまいました。「とんでもない。お前など、とっとと帰れ。おい誰か、早く玄関に塩をまいてこの女を追い返せ!」貧乏神の女性は、太郎さんの勢いに押されて一瞬よたよたとひるんだが、すぐに背筋を伸ばして立ち直り、にやりと笑ってこう言ったのです。「あなたは愚かなことをしましたね。先ほどの福の神は私の姉なのです。私たち姉妹は二人で一人、決して離れることができないのです。私がこの家に入れないなら、姉もここには留まれないのです。では、さようなら」と言って、貧乏神の女性は去っていきました。太郎さんが慌てて家の中に戻って
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