日本むかし話より『貧乏神と福の神』

日本むかし話より『貧乏神と福の神』

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小説



「こんにちは」

寺の近くで商売をしている太郎さんの家に、ある日、若い娘さんが訪ねてきました。
笑顔が素敵な美人で、いつまでも一緒にいたくなるような女性です。

「あなたは、どなたですか?」

太郎さんがそう尋ねると、その娘さんは、意外なことを言いました。

「私は、家々を訪ねて、福の種をまいている福の神です」

太郎さんは、福の神が訪ねてきたのだと知ると、すっかり舞い上がってしまいました。

「それは、それは。どうそ、どうぞ奥へお入り下さい」と言って大歓迎し、家の一番奥の、上の間に通して、その女性の前にご馳走を並べたのです。


それからしばらくすると、太郎さんのところへ、また別の女性が訪ねてきたのです。その女性は大変みすぼらしい格好をしており、太郎さんの好みの女性ではありませんでした。

「あなたは、どなたですか?」

太郎さんがそう訊くと、

「私は貧乏神です。しばらくこの家において下さい」と言うのです。

美しい福の神の登場で、すっかり良い気持ちになって満足をしていた太郎さんですが、今度は迷惑な客が現れたものだと腹を立ててしまいました。

「とんでもない。お前など、とっとと帰れ。おい誰か、早く玄関に塩をまいてこの女を追い返せ!」

貧乏神の女性は、太郎さんの勢いに押されて一瞬よたよたとひるんだが、すぐに背筋を伸ばして立ち直り、にやりと笑ってこう言ったのです。

「あなたは愚かなことをしましたね。先ほどの福の神は私の姉なのです。私たち姉妹は二人で一人、決して離れることができないのです。私がこの家に入れないなら、姉もここには留まれないのです。では、さようなら」と言って、貧乏神の女性は去っていきました。

太郎さんが慌てて家の中に戻ってみると、すでに福の神の姿は消えていたとさ。


               (了)


古事記にも、とても美しいコノハナサクヤヒメさまという女神さまと、姉のイワナガヒメさまの話があります。

コノハナノサクヤヒメとともに天孫瓊々杵尊さまの元に嫁ぐさい、イワナガヒメは美しくはなかったことから父の元に送り返されました。

オオヤマツミさまはそれを怒り、イワナガヒメを差し上げたのは天孫が岩のように永遠のものとなるように、コノハナノサクヤビメを差し上げたのは天孫が花のように繁栄するようにと誓約を立てたからであることを教え、イワナガヒメを送り返したことで天孫の寿命が短くなるだろうと告げました。


西洋占星術でも、木星は大吉星だといわれていますが、調子に乗りすぎて拡大と発展を強引に進めてしまうと、大きなトラブル、とりかえしのきかない挫折を味わうこともある星です。

土星は忍耐を強いる星だとされていますが、人間的な成長、魂を鍛えてくれる星でもあります。

日本むかし話には、いくつもの教えがあって、とても興味深いです。


                 (了)



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