占いと心の距離 ― 優しさのかたちを探して。
あの日、彼女の笑顔を前にしてついた“裏切りの嘘”――。それは私にとって、長いあいだ胸の奥に残る痛みでした。占いとは、人の心に触れること。けれど同時に、占う自分の心もまた、そっと試される瞬間でもあるのだと知りました。泣きながらカードを並べた夜、私は初めて“自分の中の声”と向き合いました。「占いって、なんだろう。」「本当の優しさって、どんな形なんだろう。」何度も何度もシャッフルして、引いて、戻して。そして出てきたカードは「節制」。“心のバランス”“調和”“静かな信頼”を意味するカード。その瞬間、ふっと腑に落ちました。――「相手の心を動かす前に、自分の心を整えなさい」と。それ以来、私は占う前に必ず深呼吸をします。「この人の心に寄り添う覚悟はあるか」と、自分に問いかけながら。占いは、未来を決めるためではなく、今の心をやさしく見つめるための“鏡”だと思うようになりました。だからこそ、私は少し距離を置いています。「占い師」としてではなく、“心をのぞく案内人”として、ただ隣を歩くように。やがて私は大学生になり、時代はバブルの真っただ中。けれど、遊び惚ける暇もなく、アルバイトと学業に追われる毎日でした。地元を離れ、初めての一人暮らし。カードはいつしか、机の引き出しの奥にしまわれたままでした。成人式の頃、久しぶりに帰郷したとき、あの彼女に再会しました。「はくちゃん!! 久しぶり!」彼女は、あの頃よりもずっと綺麗になっていました。懐かしさと、あの日の記憶が胸をざわつかせました。「ごめん。あの時、実は……」私はあのときの占いのことを、正直に打ち明けました。彼女の信頼を裏切ったことを謝りたかったのです
0