忘れられない人がいる、それでいい
五月の風が少し緩んで、山の裾や公園の隅にシランが咲いている季節になりました。
紫がかったピンクの小さな花が、茎の先にいくつも連なって揺れているのを見たことがあるだろうか。派手さはないけれど、どこか品があって、近くに寄るとほっとするような佇まいをしている。しかもシランは群れて咲くんです。一本では咲かずに、まるで集まって語り合っているみたいに、肩を寄せ合うように花を広げる。
その花の向きをよく見ると、少しうつむき加減で咲いていることに気づくと思う。昔の人はそれを見て「花どうしが内緒話をしているのかもしれない」と感じたんでしょうね。だからシランの花言葉のひとつは「楽しい語らい」。なんだかかわいらしい由来だと思いませんか。
もうひとつの花言葉、「変わらぬ愛」と「あなたを忘れない」は、ギリシャ神話に由来しています。太陽神が深く愛した少年が、先に命を落としてしまった。その悲しみを忘れられない神の思いが、花に宿ったと言われているんです。美しい言葉の裏に、手放せないほどの喪失感がある。そう思うと、シランはただ可憐なだけじゃない花だと感じてきます。
あなたにも、忘れられない人がいますか。
もう終わったはずの縁なのに、頭のどこかに残っていて。相手が今どうしているか、自分のことを覚えているかどうか、ふとした瞬間に気になってしまう。そういう感情を、誰かに話せずに抱えている方がいたら、少し読み続けてもらえたら嬉しいんですよね。
少し前に、四十代の女性から相談がありました。数年前に別れた人のことが、どうしても頭から離れないと。新しい出会いもあったし、気持ちを切り替えようとも思った。でも、なぜか他の人に心が
0