6話:保育士試験の先にある『志』
その日も雨が降っていた。夜の駅前。濡れたアスファルトに信号の赤がぼんやり映っている。車が通るたび、水たまりが小さく揺れた。あさひたちと話していた。ワインレッドのスーツの男性はコンビニの軒下で立ち止まっていた。ネクタイは少し緩み、肩には一日の疲れが残っている。片手にはホットコーヒー。もう片方にはスマホ。画面には保育士試験を受けた人たちの投稿が並んでいた。”また社会福祉で落ちた””参考書にない問題出すのやめて””保育の現場で使うの?これ”男性は小さく息を吐いた。そのまま画面をスクロールする。”子どもは好き。でももう無理”その言葉で指が止まった。コンビニの屋根を叩く雨音だけが響く。駅前を歩く人たちは、傘を差しながら足早に通り過ぎていく。またか…“保育が嫌い”になったわけじゃない。それでも“試験で削られていく”。そんな感覚の言葉だった。男性はスマホを閉じた。そして、雨の向こうに見える保育園の灯りをぼんやり見つめた。翌日。あさひとヨルがいるオフィス。窓の外には、まだ昨日の雨雲が少し残っている。ドアが開き、ワインレッドのスーツ姿の男性が再び入ってきた。そのまま、スマホを机の上に置く。「これ、見てもらえますか」画面には昨夜の投稿。あさひは静かに読む。ヨルも横から覗き込む。「……」空気が少し重くなる。男性はネクタイに手を添えて少し整えながら言った。「最近、思うんですよ」少しだけ目を細める。「保育士試験って、“現場に必要な人”を見てるのかなって」部屋が静かになる。ヨルが腕を組んだ。「急に核心」男性は苦笑する。「だって、おかしくない?」あさひが紙コップを持ちながら話しに入る。「現場では、確かに技能
0