過去の作品 短編小説②
こちらで過去に書いた短編小説(1,600字程)をお読みいただけます。
さくさく読める童話です。ぜひご参考ください♪
********『どこかにある国の話』ずっと前におばあちゃんがしてくれた、遠い遠い国のお話をします。
ちょっと想像してみてください。あたりを見回すと、そこらじゅうに重たそうな布袋のようなものがぶら下がっているんです。小学校をぐるっと囲む柵に引っかかっていたり、 オフィスビルの中庭につり下がってたり 、レストランの軒先の、はしっこの方でぶら下がっていたり。本当にいたるところに、です。
あちこちに引っかかるそれは、ハンモックでした。
その国では、国民は18歳になると、お酒を飲む権利と同時に、1人に1枚、ハンモックが与えられます。
国じゅうどこでも、好きなところに、はしっことはしっこを見つけて良いのです。道をふさがない。人のものを壊さない。それが守れれば、どこでもハンモックをぶら下げて良いことになっていました。法律でそう決められていたのです。
パンが大好きなある青年は、パン屋の裏庭を少々拝借、そこに自分のハンモックを吊り下げます。(店の表側に寝そべっていたら、道行く人々からショーケースに並ぶつやつやのパンを隠してしまいます。)
そうして出来た寝床でさあ、お昼寝です。すぐそこの厨房からやってくる、濃厚なバターの香ばしいにおいをかぎながらするうたた寝の、なんと気持ちの良いことでしょう。それは、大学生の彼が、分厚い本に囲まれて研究にいそしむ合間の、お楽しみなのです。
どこでも好きな場所を拝借できるのは、素敵なことです。
そして〈拝借される〉方にも、ときど
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