このあいだ散歩しながら「裸の王様」について考えてみました。
何の拍子にそんなことになったかは覚えていませんが。
何かいやらしいことを思い浮かべていて、裸から連想したのかなあ。
それはいいとして、この話は有名ですからほとんどの方が内容をご存じだと思います。
一応、説明しておくと、デンマークの作家ハンス・クリスチャン・アンデルセンが、1837年に、スペインのアン・マヌエルの寓話集「ルカノール伯爵」のエピソードの一つを翻案し、発表した童話ですね。
設定がとんでもなく強引なんですが、それを指摘するのは野暮といったものでしょう。
それはいいとして、「裸の王様」は、身の回りに批判者や反対者がいないために、本当の自分がわかっていない権力者の比喩として引き合いに出されることが多いようです。
しかし、「だけど、なんにも着てないよ!」と叫んだ子供はKYとしかいいようがないですね。
そして、運が良かった。
普通だったら、王様に恥をかかせたのですから、投獄されるか、下手したら火あぶりの刑に処されても不思議ではない。
子供だから大目に見てもらえたのでしょうか。
とにかく、王様は思ったよりも寛容だったんですね。
人が良かったというか。
だから簡単に詐欺師に騙されたのでしょうが。
しかし、こういう場合に、この子供のように、考えもなしに思ったことを口に出す人間は、現代日本では生きていけないでしょう。
普通は、上司や先輩がものすごくおかしなファッションで得意になっていても、それを指摘できません。
たとえば、「そのネクタイは本当に酷いセンスですね」なんていえるはずもない。
心ないお世辞をいうのが普通ですね。
また、誰でも偉い人からくだらない冗談を聞かされて、無理に笑った覚えがあるでしょう。
しかし、それは決して責められるようなことではありません。
世知辛い世の中を生き抜くために必要な処世術なのです。
もともと人には同調行動を取る傾向があります(特に日本人にはこの傾向が強いとされている)。
人は「社会から受け入れられたい」「社会の一員でありたい」「自分も皆と同じでありたい」という社会的帰属の動機から同調行動を取ります。
自分も皆と同じであることで、制裁や懲罰、嘲笑を免れ、安心できるわけです。
相当に偏った性格か、世の中の流れに逆らってとにかく目立ちたい人(芸術家に多いかな)以外は、「裸の王様」の子供を真似るのは控えるべきでしょう。
「裸の王様」に限らず、童話やおとぎ話(ところでこの二つはどうちがうんだろう)に一面を鋭くえぐりっている側面があることは否めません。
しかし、前にも書いたとおり、よく考えると突っ込みどころが満載であることも少なくない。
まあ、いないとは思いますが、若い人が「裸の王様」の警句を真に受け、会社で思ったことをそのまま口に出して、出生街道から外れてしまうなんてことがないように願っています。
では。