コーチングは知識、目標、アドバイス、評価、などを与え、与えられる関係であってはならないということ。コーチがクライアントの課題について知識、経験、実績を持つことが前提にならないライフコーチングでは特にこれが強調されます。
コーチング関係はいつかは終了するものであり、基本的にはクライアント自身が自分自身をコントロールできるようになるまでの「かりそめの外部ツール」です。ここがスポーツコーチングやビジネスコーチングの一部のようなパフォーマンスコーチングで「教え、導き、アドバイスする」ことが当然とされるのとの大きな違いです。パフォーマンスコーチングでもクライアントの「自主性」が重んじられますが、基本には「トレーナー」的なアプローチがあり、そこには専門的なスキルを持つコーチからクライアント側に向けての権威の「傾き」があります。「コーチのリーダーシップ」が強調される場合も少なくないでしょう。これを「権威勾配」といいますが、いわゆる「上から目線」がこれに近いイメージです。
ライフコーチングで「コーチがクライアントの課題について知識、経験、実績を持たない」のならそもそも知識、目標、アドバイス、評価、などを「与え」ようもないはずなのだけれど、そこはやはりスポーツコーチングなどからの連想でついクライアントはアドバイスを求めがち、コーチもそれを与えなければ、と思ってしまう、ということが起きます。特に、コーチ側がクライアントの課題についてある程度の経験、スキルを持っていたり、多少の自信があったりする時にはなおさらです。
この点について私が受講したNLPプロフェッショナルコーチのコーストレーナだったティム・ハルボム氏は参加者から問われて「口にチャック」のジェスチャーで答えていたのを思い出します。
なぜこのことが重要かは自律性、セルフコントロールの促進と依存の防止、という観点を考えると理解できるでしょう。
コーチングで目指しているのはクライアントが自力で自分自身を自由自在にコントロールしてフットワーク軽く行動できる状態にいつもいられるようにすることです。しかしなかなか自分自身を外からの目線で客観的に見るのは難しいために「かりそめの」外から目線を提供するのがコーチの役割です。この時に行動の振り返りとしてフィードバックする時の物差し、尺度はあくまでもクライアントの尺度でなければいけません。「中立でいる」の項目で書いたことを思い出していただければと思います。
逆に安易にアドバイス、答えを提供し続けてしまうと最悪の場合、コーチング下ではうまくいくけれど一人ではダメという「コーチング依存」のような状態に陥ってしまう危険もあるため、これは何としても避けなければなりません。