コーチングでよく使われるちょっとした定型句やメソッドを集めた道具箱。その中からいくつか代表的なものをご紹介したいと思います。今回は「メタクエスチョン」について。
「メタ」というのは「より上の」くらいの意味なので質問の上の質問、究極の質問、といったニュアンスです。
実際のフレーズとしては、
「それが得られると(できると、実現すると)さらに何が得られますか?」
「どんないいことがありますか?」
のように使います。
英語の「benefit」という語がもとになっていますが、日本語では「よいこと」と言ったり、「メリット」と言ったり場合に応じてバリエーションを加えてもいいでしょう。
この質問に対して出てきた答えを元にして、さらに「それが得られるとどんないいことがありますか?」と同じ質問を何回も繰り返していきます。
だんだん抽象的な答えになってきたりして、質問文に少し違和感を感じるようになるかもしれませんが、構わずに
「同じ質問を繰り返すので少し奇異な感じがするかもしれませんが…」などと前置きして同様に反復していきます。
例を挙げます。
「朝、早起きをする(早起きの習慣を身につける)」という目標について考えているとしましょう。
「目標達成」という枠組みに乗せるためには、
「早起きができている、というのは具体的にはどんな状況ですか?」とか
「それがどれだけ続けられたら当面の目標がクリアしたと言えますか?」などと達成の基準を明確にしていくプロセスが入ったりしますが、ここではそのことはとりあえず脇に置いてメタクエスションをしていってみます。
Q:「早起きの習慣が身に付いたらどんないいことがありますか?」
A:「一日が有効に活用できるようになります」
Q:「一日が有効に活用できるようになるとどんないいことがありますか?」
A:「やりたいことがはかどります」
Q:「やりたいことがはかどるとどんないいことがありますか?」
A:「仕事でも趣味でもやりたかったことができるので達成感が得られます」
Q:「やりたかったことができて達成感が得られるとどんないいことがありますか?」
A:「周囲からも認められて自信が付きます」
Q:「周囲からも認められて自信が付くとどんないいことがありますか?」
A:「幸せな気持ちになります」
Q:「さらに質問を重ねるのは少々奇異な感じがするかもしれませんが、あえて言うと幸せな気持ちになると何が得られますか?」
A:「生まれてきて良かったという気持ちになれます」
ここではメタクエスチョンを6回重ねていますが、最低でも5回続けて質問し、止まってしまったら少し強引に「直感でもかまいません、あえて言うなら、でかまいません」などと続けてみます。
「幸福感」のように大きくて抽象的な概念や自己実現的な方向に向かっていくことが多いですが場合によっては前に出たものに戻って循環することもあります。その場合もさらに続けると別の方向に展開したりしますので循環しても止める必要はありません。
メタクエスチョンをコーチングプロセスのどこで用いるか、ですが次のような場合が代表的でしょう。
(1)目標を設定した時
これを実現しよう、という達成目標であっても、またそのために必要な行動目標であっても、目標を決めた時にはまずこのメタクエスチョンをします。
(2)行動のモチベーションを高めたい時
達成目標を定め、その実現に向けたプロセスを行動目標の形で切り出して、それを実際に開始し、確実に繰り返して習慣化する、という道筋の中でなかなかうまくはかどらない、やる気がわかない、といった局面が訪れることはよくあります。そのような時に「そもそも」の初心に帰って目標が実現することで得られるものを再確認するのはモチベーション向上のためのよいきっかけになります。
(3)優先順位を考える時
ある状況において、いくつかの「大切なこと」の間で優先順位を考える「価値基準」の確認作業で、それぞれの個別の「大切なこと」が充足された時に得られるものをていねいに確認する作業としてメタクエスチョンを用います。
例えば、転職をしようとしている時に「転職先を選ぶにあたって」という状況で「大切なこと」として「収入アップ」「その後のキャリア形成、将来の独立に結びつく」「ゆとりある就労時間」「今までのスキルが活用できる」「人脈づくり」「社会的信用」が出てきたとしたら、そのそれぞれについて「それが得られたらさらにそのことから何が得られますか?」という形でメタクエスチョンを重ねます。
メタクエスチョンをすることの意味、意義について考えてみます。
一つ目は前の項目の(2)で述べたモチベーションの向上です。これは得られるもの、メリットを明確にする、という作業なのでその効果は理解しやすでしょう。
もう一つ、こちらはモチベーションと比べるとやや間接的です。「抽象的な概念や自己実現的な方向に向かう」ことが多い、というところに着目すると、これはロジカルシンキングで言うところの「チャンアップ」に相当するので元になった「そのこと」よりも幅広いものを含む可能性があります。前に挙げた例で言えば幸福感や達成感を得るための『元になることがら』は早起き習慣に限ったものではありません。つまり選択肢を広げて考えやすくなる、ということです。一度は決めた目標であっても、場合によって再設定や修正をする必要が生じる場合もあるでしょう。そのような場合に「目標はこれだけしかないわけではない」という感覚を持ちやすくやります。
どのような局面で使うにしてもメタクエスチョンはとても強力なツールになりうるものです。ぜひどんどん活用して思考の幅を広げていきましょう。