夜逃げ

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コラム
夜逃げ”
したことはあるだろうか。

私は、ある。

これは、
幼稚園に入るまえの話だが。

断片的ではあるが、
ところどころ記憶がある。

主犯格は母だ。

当時の私は
“ママ”と呼んでいたらしい。
犯行後からは
“お母さん”と呼ぶことになるのだが。

決行前夜、ママとその友人サキ(仮名)は確か、
喫茶店で計画を練っていた。ハズだ。

サキはヤンチャな人で、茶色い髪、派手めの服、なぜかコーラが好きという記憶がある。
私はとても可愛がられていた。

タバコと酒のせいなのか、ハスキーな声だ。
また、コーラのせいか、歯が汚かった。

(いつもの感じじゃない。)

子供ながらに、2人の会話の質が、なにか違うことに気づいていた。
当時、私とママは、実家に身を寄せていた。

ママは若いながらも、地元で有名なスナックを経営していた。
1枚板の長いカウンター、電話機、綺麗どころを揃えた店で、かなり繁盛していたそうだ。

その店のマッチのデザインは、
なぜか記憶にある。
今思い出しても、かっこいいものだった。

普段、ママがお店にいるため、
夜の記憶は、
おばあちゃんと一緒だ。

毎夜おばあちゃんと、砂嵐になるまでテレビを観ていた。

きっと、ママの帰りを一緒に待ってくれていたのだろう。

書いていて気づいた。

なぜ、おばあちゃんが夜に、
エスカップ(栄養ドリンク)を飲んでいたのかを。

一緒に寝ないで、帰りを待つためだった。

だから、テレビの砂嵐の記憶と居眠りする、おばあちゃん、エスカップの記憶がセットになっていたんだ!

私は、エスカップをおばあちゃんと一緒に飲むのが楽しみだった。

子供だからということで、小さなエスカップの瓶のキャップに
あの黄色い液体を注いでくれた。

独特の香りと甘い味。

大人の飲み物を、おばあちゃんとこっそり飲んでいる…
きっと、その背徳感が良かったのだろう。

おばあちゃん…
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(話を戻そう。)
おばあちゃんネタも色々あるので、油断すると脱線してしまう。

いきなりだが、夜逃げ決行の日。

いつものように、砂嵐のテレビの前
おばあちゃんは居眠り。

計画どおりだ。

2階の窓から、長いロープを使って、荷物を降ろしていく。

下の道路にサキちゃんがいて、受け取り、車に入れる。

緊迫したやり取りが続く。

(おばあちゃんちを出るんだ…)

その時、なぜか私は
パジャマが無いことに気づいてしまった。

「ママ、ボクのパジャマは?」

「えっ!?なに!?
下で、こっそり取ってきなさいっ」

うん…

階段の軋む音に気をつけながら
おばあちゃんの居る部屋の前へ。

ザー(テレビの砂嵐)

居眠りの おばあちゃん…

古い木造家屋の
引き戸をゆっくり開ける…

建て付けが悪いうえに、ガラスがはめられているので、
ガタガタと音がする…

子供の力では、中々開かない…

ん…ん…(もうすこし…)

ぱーん!!

勢いがつきすぎて、ものすごい音で引き戸が開いた!

目を見開いた、おばあちゃん!

「どうした?オシッコが?」
「あ、あ、いや、えと…」

生まれて初めてであろう
大パニック。

「ぱぱ…ぱ…パジャマ…どこ?」
(しまった。)

しかし
おばあちゃんは、返事をすることなく、
また眠りについていた…

それからのことは、あまり覚えていない。

車の窓から入る風が心地良かったこと。 
これからどうなるんだろう…
という気持ち。

そして後部座席で、寝転びながらみた、電線と星空。

オンボロアパートに入った時のこと
新しい父親との初対面
それらの記憶はない。

うっすらとだが、
誰かに抱かれて
車を降りたシーンで終っている。

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