経営者には、時間を巻き戻したいと思う瞬間があります。
私にも、今でも忘れられない出来事があります。
当時、私は建物300坪、駐車場500坪の複合店舗を経営していました。
居酒屋、カラオケボックス、そしてテナントとしてラーメン店が入る、大きな店舗でした。
ある日、カラオケ店の釣り銭がなくなりました。
釣り銭はレジに入れたままだったため、建物に入ることができれば誰でも持ち出せる状態でした。
実は、このような盗難は珍しいことではありませんでした。
2年に一度くらいの頻度で起きていたからです。
「これ以上、大きな被害にならなければいい。」
当時の私は、そう願うしかありませんでした。
しかし、その願いとは裏腹に、被害は年々エスカレートしていきます。
8回目には、カラオケ店と居酒屋の売上を保管していた耐火金庫が、そのまま盗まれました。
耐火金庫ごとです。
さらに同じ頃、同じ建物でテナントとして営業していたラーメン店でも盗難が発生しました。
近所のラーメン店も同じような被害に遭っていました。
この頃から、私の人間不信は加速していきました。
そして12回目。
ようやく犯人が特定されました。
犯人は、私の会社の従業員でした。
新聞でそれを知ったテナントのラーメン店の社長から、
「うちの盗難も、その従業員じゃないですか?」
と言われました。
そう思われても仕方のない状況でした。
私は、
「まだ警察の捜査中なので断定はできません。しかし、もしそうであれば責任を持って対応します。」
と答えました。
しかし、その時、私の中では別の決断をしていました。
自分の店だけならまだしも、テナントさんにまで迷惑を掛けてしまった。
もう、この場所で営業を続けることはできない。
そう判断し、撤退を決意しました。
貸主は大手企業。
契約も厳格でした。
半年分の家賃。
店舗の解体費。
原状回復費用。
その負担は、1,000万円を優に超えました。
そして、すべてが終わった頃。
警察から一本の電話が入りました。
「テナントのラーメン店と、近所のラーメン店の犯人が分かりました。」
私は息をのみました。
返ってきた答えは、
「別の犯人による犯行でした。」
……。
つまり、
私は撤退する必要など、なかったのです。
すべてが終わってから知った真実でした。
経営者は、毎日のように判断を迫られます。
その時は正しいと思って決断しても、後になって別の事実が分かることもあります。
もちろん、あの時に時間を巻き戻せたとしても、同じ決断をしたかもしれません。
それでも、人は一度くらい、
「あの時に戻れたら…」
と思う瞬間があるのではないでしょうか。
私にとって、この出来事は今でも忘れられない、
時間を巻き戻したい瞬間の一つです。
ブログを読んでいただきありがとうございます。
私は現在も飲食店経営に携わっています。
利益改善のご相談はもちろん、資金繰りや経営不安、再起についてのご相談もお受けしています。
一人で抱え込まず、お気軽にご相談ください。
◆アオ日記🐾
主人は「あの時に戻れたら」って言うけど、
今の主人があるのは、その時の経験があったからだと思うにゃ。
でもアオなら…
やっぱり金庫は重くて運べないにゃ。🐾
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