セラー業務支援室です。
私は医薬品メーカーで30年間、営業事務として働いています。
以前に「言われたとおりにしました」という言葉について書きました。
この言葉を口にする人の心理には、
「自分は与えられた指示に忠実に従っただけ」という感覚があります。
今回は、この言葉の背景にある心理を、私の実務経験をもとに、
もう少し深く掘り下げてみたいと思います。
■実際にあった2つのケース
ケース①:営業
ある若手の営業社員が、営業事務の私に計上処理の依頼をしてきました。
計上を行うには複数の資料が必要ですが、その内容に不備があったため、
私は訂正後の再提出を依頼しました。
するとその営業社員は、
「上司に許可をもらっている」の一点張りで納得せず、
機嫌を損ねてしまいました。
ケース②:営業事務
ある営業社員が、年度末の日付で計上すべき数字を、
翌月の初めに営業事務へ持ち込みました。
通常は「第〇営業日まで」であれば前月計上が可能なルールになっています。
しかし、この処理が翌月の日付で計上されてしまいました。
■それぞれの問題点
ケース①の場合
上司の「許可」は、
あくまで「その計上をしてよい」という判断に過ぎません。
複数の資料の整合性までは
チェックしていなかった可能性があると思います。
なぜならその後の営業事務、経理、監査で
チェックされるだろう前提があるからです。
つまり、上司はこのチェック工程の担当ではありません。
にもかかわらず、
「上司の許可=すべてOK」と捉えてしまうことに問題があります。
さらに、この若手社員は、営業事務からの指摘に対して、
「上司が認めているのに、なぜそれを否定されるのか」
という感情が働き、反発につながっているのです。
ケース②の場合
このケースでも、計上に必要な資料は揃っていました。
その内容を確認すれば、
「いつの日付で計上すべきか」は判断できるはずです。
それにもかかわらず、
「営業から言われなかった」という理由で誤った処理をしてしまった。
これは、単なる確認不足、とも言えますが、
内容の正しさよりも、言われたとおりに処理することを優先してしまっている状態と思われます。
■共通している本質
ケース①と②に共通しているのは、
「指示・許可に従うこと=正しい仕事」だと認識している点です。
本来であれば、
• その内容は本当に正しいのか
• 必要な条件は揃っているのか
• 前後の整合性は取れているのか
をそれぞれの担当者が自分の役割として確認することで、
ミスを未然に防ぐ仕組みになっています。
にもかかわらず、
「言われたことはすでに正しい」という前提で動いてしまう。
その結果として出てくる言葉が、
「言われたとおりにしました」です。
そしてこの言葉の裏には、
責任を自分の外に置こうとする意識があり、
それが周囲に違和感やモヤモヤを生むのだと思います。
■学校とは違うのです
なぜこのような言動になるのか。
私は、その背景に「学校での評価のされ方」があると考えています。
学校では、
教科書の内容を覚え、
テストで「合っているか・間違っているか」で評価されます。
先生の言う通りに行動することで、正しい評価が得られる。
その成功体験が、
「言われたとおりにする」行動を強化してきた可能性があります。
しかし、会社は学校ではありません。
上司も先生ではありません。
さらに言えば、
今の仕事環境は常に変化しており、
上司自身も「常に正解を持っているとは限らない」状況にあります。
そしてルールや制度も年々増え、複雑になっています。
それらをすべて上司が把握する必要はなく、
それぞれの担当者が、自分の領域として理解しておく必要があります。
そして“誰がその領域の担当なのかを知っておくこと”も重要です。
■実務において求められること
実務において求められるのは、
指示に従うことではなく、
•ルール・制度に準じて正しい処理を行うこと
•企業である以上、最終的には利益につながる行動であること
そのために大切なのは、
「上司の判断も含めて、一度自分で確認して、納得してから動くこと」
この視点を持つだけで、確実に“無駄なミス”は減っていくと、
私は経験上そう感じています。
そして、
“言われたとおりにやる人”で終わるか、
“信頼される人”になるかは、
この差だ
と私は感じています。