セラー業務支援室です。
私は医薬品メーカーで30年間、営業事務として働いています。
インターネットの登場、そしてスマートフォンの普及によって、世の中には次々と新しい販売方法や販売用語が生まれてきました。
SNSやECサイトを通じて、個人でも簡単にモノを売れる時代になったことは、間違いありません。
しかし実は、いま話題になっている販売方法や販売用語の多くは、インターネットがなかった時代から存在していたものです。
• せどり = 商品を仕入れて販売すること
• 転売 = すでに小売(消費者向け)されている商品を仕入れて、
さらに販売すること
• 転売ヤー =「転売」と「バイヤー」を掛け合わせた造語で、
主に揶揄する意味合いで使われる言葉
■「せどり」とは
「せどり」と検索すると、さまざまな解説サイトが見つかります。
改めて整理すると、
「せどり」は江戸時代ごろから使われていたとされる俗語です。
語源には諸説あり、
• 生鮮品などの**競り(競どり)**から来ている
• 本の背表紙(背どり)を見て、良書を見極めて仕入れることから来ている
などとありますが、いずれにしても、意味するところはとてもシンプルです。
自分では商品を作らず、仕入れた商品に手数料を上乗せして販売すること。
これが「せどり」です。
そして「手数料を上乗せして売るために商品買う」ことを、「仕入れる」
と言います。この定義で考えると、
• スーパー
• デパート
• コンビニ
• 卸会社・問屋
• 商社
これらすべてが「せどり」をしていることになります。
卸会社や商社といった仲介業者を通るたびに手数料が上乗せされ、
最終的に消費者が支払う価格=市場価格が形成されます。
かつて、消費者が商品を購入する手段は、
実店舗か通販しかありませんでした。
しかしインターネットの普及によって、
誰でも簡単に商品を販売できるECサイトが誕生し、
製造会社が消費者へ直接販売すること(D2C)も容易になっていきました。
■「転売」とは
「転売」は、すでに小売されている商品、
つまり市場価格で取引されている商品を購入し、
それをさらに別の消費者へ販売する行為を指します。
昔は、実店舗や通販が主な販売チャネルでした。
「非常に人気の高い」「製造数が少ない」といった
入手困難な人気商品については、
小売店が製造元や卸会社に交渉して仕入れて、
消費者は小売店で売っているものを買うしかありませんでした。
そのため小売店も必死になって仕入れ競争を行っていました。
一方、製造会社から消費者へ直接売る商法もあり、
代表的な例が、ライブやイベントなどのチケット販売になります。
(「チケット〇あ」など販売店もありますが、ライブ会場で売っている場合等を指しています)
話は戻りますが、「転売」の一つとして、
個人が不要になった物を売るというケースがあります。
その場合、一般的な方法として、
• 専門店に買い取ってもらう
• フリーマーケットやバザーなどで、
店頭価格ではありえない破格の価格で売る。(ECサイトも含む)
そのような取引は利益を目的とした売り方ではないので、
税法上の問題になることもありません。
また、商品によっては、販売資格が必要なものもあります。
特にインターネットがない時代はモチロン今でも、
一般消費者では判断が難しいため、
専門店で判断して買い取ってもらうのが、適切な取引です。
専門店も販売業者として販売資格を取得しているでしょうし、
市場価格を踏まえた買い取り価格を提示します。
ではチケットの場合、
チケットを持っている人に直接交渉し、定価やそれ以下で買い取り、
当日に会場周辺で定価より高い価格で販売します。
いわゆる「ダフ屋」です。
ダフ屋は差額が「手数料」として利益をとるわけです。
ひと昔前は、安くチケット売る消費者のほとんどは、
「当日行けなくなってしまった友人のチケットを処分したい」という
事情をかかえている人でした。
その受け皿が、前日から当日に会場周辺にいるダフ屋だったのです。
ダフ屋も、「仕入れ競争」をしているので、
ほとんどが定価以下で買い取ってくれました。
現在では、こうした事情への救済措置として、
チケット再販専用のECサイトが整備され、
より透明性のある形で取引が行われるようになっています。
以上のことから、あくまで私の経験ベースにはなりますが、
これまでの「転売」には、
定価以下で仕入れるという“暗黙のルール”のようなものがあった
と感じています。
いわば、売る側も買う側も納得できる範囲で成り立つ取引が、
自然とできていたのではないでしょうか。
■「転売ヤー」の登場
現在は誰もがECサイトで簡単に物を販売できるようになり、
価格も販売者が自由に設定できる時代になりました。
市場価格を大きく無視した値付けであっても、出品すること自体は可能です。
もっとも、価格競争は常に起こっていますから、
相場とかけ離れた高値では通常は売れません。
しかし、入手困難な人気商品となると話は別です。
高額であっても「それでも欲しい」という人が現れ、
実際に売れてしまうのです。
その結果、上記の“転売の暗黙のルール”が崩れてしまったように、
私は感じています。
■人を傷つける転売、人を幸せにする転売
たとえば、
• 子どもがコツコツとお小遣いを貯め、やっと欲しいおもちゃの金額に達したのに、店頭ではいつも品切れ。親がECサイトで調べてみると、正規価格とは比べものにならない高額で販売されている。
• 年に数回しかない「推し」のアーティストのライブを楽しみに、日々一生懸命働いているのに、チケットが正規の価格ではなかなか取れない。人気が高く抽選に外れるのは納得できても、直後にECサイトで高額転売されているのを目にする。
これらは、人の「欲しい」「楽しみにしている」という
純粋な気持ちを踏みにじる行為です。
だからこそ、単なる「転売」ではなく、
強い嫌悪感を込めて「転売ヤー」という揶揄する言葉が生まれたのではないか――私はそう感じています。
一方で、転売という行為がすべて同じ意味合いを持つわけではないとも
私は思っています。
たとえば近年、チェーン店は採算が合わない店舗を次々と閉鎖しています。
その結果、周辺住民が日常の買い物に困るようになり、
「買い物難民」という言葉まで生まれました。
この問題は過疎地だけの話ではありません。
住宅地であっても、区画整理や企業側の都合でスーパーが撤退し、
大規模マンションや団地に住む人たちが買い物難民になるケースもあります。
そうした地域にやって来るのが移動販売車です。
移動販売では、人件費やガソリン代が価格に上乗せされるため、
商品は通常のスーパーより割高になります。
それでも、自動車を運転できない人や、足の不自由な方にとっては、
「多少高くても、自分の目で見て生鮮食品を選べる」という価値は
非常に大きいものです。
会社組織として移動販売を行えば、
これは前述の「せどり」のビジネスモデルです。
では、もし個人で同じようなことをしていたら、どうでしょうか。
また私的な話ですが、
先日友達が同じ日の野球観戦のチケットを誤って重複購入をしてしまい、
私と家族に定価で譲ってくれました。
おかげでとても楽しい時間を過ごすことができました。
それらは上記の説明どおり「転売」になるでしょう。
しかしながら、その行為は揶揄される「転売ヤー」なのでしょうか。
もうひとつ、Amazonセラー様向けに売上管理資料を作成するサービスを提供している立場として、
ひとつ触れておきたい販売手法があります。
それが“Amazon刈り取り”と呼ばれるものです。
現在はAmazonの規約上、規制対象となっているようですが、
仕組みとしては前述のとおり「転売」に分類されます。
小売店やAmazon出品者が、感謝セールであれ在庫整理であれ、
何らかの事情で市場価格下げて消費者に販売している商品を
仕入れて再販売する、
これはまさに転売そのものです。
市場価格が下がる背景には、販売者側の努力や事情が必ずあります。
そこを“刈り取る”形で利益を得るのではなく、
ビジネスとして継続的に利益を出すためには、
「安く仕入れたいのであれば、仕入先を開拓する努力をして、正攻法で安く仕入れてほしい(せどり)」
と、メーカー勤務が長い私としては、そう思います。
安く仕入れるための具体的な方法については、以下にまとめていますので、よければ参考にしてみてください。
昔から、商売には「三方良し(売り手よし・買い手よし・世間よし)」
という考え方があります。
転売という行為そのものが問題なのではなく、
その取引が、誰かの“困った”や“嬉しい”の上に成り立っていないか。
そこが、大きな分かれ目だと思っています。
だからこそ私は、
売り手も、買い手も、そして周りの人たちも、少しでも幸せになるような
「転売」であってほしいと願っています。